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    カケルイシ     作・中島伸周

  登場人物
 坂田 健(サカタ ケン)
 坂田 アキ(サカタ アキ)
 南 猛(ミナミ タケシ)
 丘 ユリ子(オカ ユリコ)
 ポーチュリア・パリオ・ハクサファ(ぽーちゅりあ・ぱりお・はくさふぁ)
 岸田 文夫(42)(キシダフミオヨンジュウニサイ#ヤクドシ)
 クリス牧師(クリスボクシ)
 ララー・チュパカブラ(ららー・ちゅぱかぶら)

 プロローグ・・・・・・・『はじまりはじまり』
 第一場・・・・・・・・・『退屈な日々』
 第二場・・・・・・・・・『ホビーキシダ』
 第三場・・・・・・・・・『遠くの星から来た人造人間』
 第四場・・・・・・・・・『考え売ります』
 第五場・・・・・・・・・『描ける石』
 第六場・・・・・・・・・『イーちゃんと夏みかん』
 第七場・・・・・・・・・『しょぼい策略』
 第八場・・・・・・・・・『誘拐そして遭遇』
 第九場・・・・・・・・・『歪んだ世界』
 第十場・・・・・・・・・『大円団?』
 エピローグ・・・・・・・『最高の考え』


   プロローグ『はじまりはじまり』

     それはおとぎ話の始まりか、優しくてそれでいてどこか寂しげなメロ
     ディーが辺りをつつむ。
     心地のよい夢とも懐かしい想い出ともとれるその光は・・・・・・・。
     寂れた商店街、その入り口にある果物屋。見るからにあまり儲かって
     いなそうだ。強い北風が木で出来た戸や窓枠をガタガタ揺らしている。
     そこにマントの男がふらふらとやって来る。今にも倒れそうなそんな
     不自由な感じは、そのたどたどしい歩き方からもひしひしと伝わって
     くる。やがてマントの男は果物屋の前で突っ伏してしまう。
     その一部始終をみていた店の主人あわてて飛び出す。
     マントの男は主人に何かを伝える。
     主人は急いで店においてあるバナナを取りマントの男に差し出す。
     マントの男は深々と頭を下げ礼を言う。何度も何度も感謝の言葉を重
     ねるように。

声 フォボスより火星本星ならびにダイモスへ告ぐ。宇宙囚人303号が火星圏内で目撃さ
  れたもよう。303号は電子頭脳を奪って逃走中。予測される逃亡ルートは45万6千
  4百50通り。その中でもっとも有力な逃走ルートは地球。逃走者を直ちに捕獲せ
  よ。目的地は地球、目的地は地球。

     真っ赤に燃える火星を背に衛星フォボスで、でかい段ボールのような
     頭をしたヤツがよろよろと逃げ回っている。

   第一場『退屈な日々』

     夕方、まだわりと陽も高いのに今にも泣き出しそうなその空はどんよ
     りと薄暗く、遠くの空では雷も鳴っている。強い風が吹き、寂れた商
     店街に訪れる人も少ない。裸電球で明々とした果物屋の前でケンが口
     を開けてちゃちな丸い椅子に腰をかけ退屈そうに店番をしている。商
     店街に訪れる人もまばらである。
     一人、二人、人が行き交う。
     そこに黒い牧師の服を着た怪しげな男がやって来る。クリス・ハング。
     メキシコから移住してきた牧師(謎)。

クリス アノー、スンマセン。

     ケンは最初その声に気付かない。

クリス チョット、ヨイデスカ?
ケン ・・・・・。
クリス ナア・・・。

     グリ、グリとにじり寄る牧師。手にはメキシコ帽をかぶった陽気な髑
     髏をあしらった黒く光るやたらツヤツヤの十字架が握られている。

クリス ナア、テエー。
ケン うわーっぁぁぁぁぁぁぁ、ウワーッァァァァァァァ!

     ケン、大げさにとびのいて、

ケン ああ、おきゃくさん?・・・スミマセン、ごめんなさい、いらっしゃいませ。ど
  うぞじっくり見ていってください。何でも言ってください。
クリス アノー、スンマセン、スミマセン、チガウンデス、チガウンデス。
ケン はい?
クリス アノー、桃野谷商店街ハ、コチラデ、ヨロシイノデショウカ?
ケン そっそうですよ。ここから入っていけばずっとそうですけど・・・。
クリス アリガトウ、ゴザイマス。オイノリシマス。神ノ御加護ガアランコトヲ。
ケン いえ、どうも。
クリス アトー、

     クリスがケンをじっと見つめると、仰々しくフラメンコギターの情熱
     的なメロディーが。固唾を飲み込むケン。

ケン なぁっ、なんですか・・・・?
クリス ナンデモナイデス、アリガトウ。

     と、言い残しクリスは去ってゆく。ケンは大きくため息をつくとしば
     らく呆然としている。やがてその顔は元の退屈そうな顔になる。
     そこに、一人の帽子をかぶり大きなカバンさげた男が現れる。南タケ
     シである。タケシは早口でしゃべり出す。

タケシ お疲れーって、どうしたのそんな顔しちゃって?いかにも「わたしは退屈で
  す」みたいな。
ケン ああ、なんだタケシか・・・。
タケシ なんだって、なんだじゃないだろ、なんだじゃ。って、これ貰うね。

     と言ってミカンを一つ手に取る。ケンは文句こそ言わないが叱りつけ
     るような顔をして応じるが動じないタケシ。

タケシ おいそれより!

     バタバタとケンの腕をひっぱり、隣のシャッターの閉まった米屋の軒
     下へ引きずり出す。

ケン なんだよ!?

     シャッターに背中をぺたりと付けて二人並んで、

タケシ それより、それより、それより。
ケン だから、なんだよ?
タケシ アキちゃんは?
ケン はあ・・・朝出て行ったきり、まだ帰って来ないよ。
タケシ そっ、そうか・・・。

     ケン、変で地味な悔しそうなリアクションを取るタケシにあきれた素
     振りをみせて、

ケン おまえなあ、アキは俺の妹だぞ。しかも小さい時からよく遊んだよなあ。俺とお
  前とアキと、そしてユリちゃんの4人で・・・・。
タケシ みかん食べる?
ケン いいよ・・・。(コイツには何を言っても無駄だ)
タケシ で、どうよ店の調子は?はやってる?
ケン まあ、ねえ。いつもとかわらない。
タケシ はやってないって事か・・・。
ケン お前はいいよなあ。
タケシ まあ、こんなご時世だしな。

     と言い放つとパクリとみかんを一房、口の中に放り込むタケシ。

ケン どんなご時世だよ。お前何にもわかってないだろ、まったく。
タケシ わかってるよ、不景気なんだろ。そんなことぐらい知ってるよ。ちゃんと見て
  るんだよ、俺だって。ワールド・ビジネス・サテライト(再)。他に面白いのやっ
  てない時は。
ケン いいや、なんにもわかってない。いいか?戦後にっぽん、なにも無い焼け野原の
  中で必死に働き、東洋の奇跡と呼ばれるほど驚異的な経済成長を成し遂げた現代日
  本を創り上げた先人の苦闘を知り、忘れてはならない。それが死んだ爺さんの口癖
  だった。しかしどうだよ!奴らの大半が息絶えると同時に、バブルははじけ、景気
  は低迷、先行きもみえない。散々でかい顔して、彼奴ら結局自分たちで食いつぶし
  て何も残せなかったんだよ。
タケシ うわーそれ言い過ぎ。どうしてそんなばちあたりなこといえるかなー。ダメな
  んだぞー。おまえの爺ちゃんも草場の陰で泣いてるかもだよ。そうなったら最悪の
  事態だよ、新種のコオロギだよ。
ケン 言い過ぎなもんか。俺に残されたのは借金だらけのこの店だけ・・・。
タケシ やっぱり、たたむのか・・・?この店・・・・。
ケン ・・・しかたないだろ。
タケシ お前ら兄弟二人で今までやってこれたじゃないか。
ケン 今まではな。でも、もうこんな小さな果物屋なんて流行らない、もう必要とされ
  てないんだよ。誰からもな。
タケシ やっぱり、だめだよ。
ケン なんで?
タケシ やっぱり、オレ的には商店街の入り口には果物屋がないと。
ケン なんだそれ?
タケシ なんか、商店街の入り口には果物屋がないと商店街じゃあないじゃん・・・う
  ん。やっぱここにはこのボロッチイ・・これだよ・・・うん。
ケン 人ごとだな。
タケシ まあ、イライラしなさんなって。俺にめくじらたたてもしかたないだろ。
ケン 絶対人ごとだ。

     そこに二人組の女性が帰って来る。一人はスーパーのビニール袋に突っ
     掛け、もう一人は何やら大きな荷物を抱えている。

アキ 何が人ごと?
タケシ うわー奇遇だなあ!アキちゃん、おかえり。
ケン 奇遇?
ユリ子 ユリちゃんもいるよ。
ケン ああ、ユリちゃんもお帰り。
タケシ ケッ。
ユリ子 聞こえるように「ケッ」って言ったな。
アキ ああ、今ねそこであったの。
ユリ子 そうゆう事だ。
アキ で、こんなところでなんの話ししてるの?
ケン ああ、ちょっとね。
ユリ子 猥談。
アキ  猥談!?
ケン だから景気が悪いなって話していたの、ナア?
タケシ そうだったけ?
アキ そんな事より早くしまわないと、雨、今にも降るよ。
ケン ああそうだな。
タケシ うわあ、なんじゃこりゃ?
ケン なに?
タケシ 空。
アキ そう凄いでしょ?
ケン うわあ、ほんと凄い色。
タケシ 凄い赤。
ユリ子 なに、今気がついたの?二人して・・冗談。
ケン あれみたいだ。
タケシ なに?
ケン ほらアレ。ウルトラセブンのメトロン星人が出てくる話・・・。
ユリ子 第8話「狙われた街」。
ケン 夕陽っていったらやっぱあれだよね?
ユリ子 そうかしら?
タケシ 知らねえよ・・・。
アキ まるで世界の終わりみたいな・・・。
ケン 火星の空もきっと、きっとこんな赤なんだろうなあ。
アキ そうなの? ケン 知らないけど・・・きっとそうだよ。
ユリ子 なんで?
タケシ だって火星だもんね。
アキ それなんとなくわかる。
ケン 火星に住みたいと思う?
タケシ なに?またウルトラセブンのはなし。
ケン 違うよ。本当に住めるとしたら、住みたい?火星。
アキ 住めないよ。
ケン 住めたとしたら。
アキ 住めないよ、火星だよ。
タケシ そうだよ住めないよ、だって火星だよ。
ケン 住めないかなあ?
ユリ子 住めるよ。
アキ 宇宙にあるんだよ。
ケン ロケットに乗っていけばいいじゃん。
タケシ しかも水も空気もないんだよね。
ケン だったら、造ればいいじゃない。
アキ そんなのできっこないって、火星だよ。
タケシ そうだよ、火星だよ。
ユリ子 だから住めるんだって、火星。
三人 えっ!?
ユリ子 テラ・フォーミングってゆうんだって。
三人 テラ・フォーミング・・・・あっ・・・・・。

     声を合わしてしまった事をちょっと恥ずかしような悔しいような細か
     いリアクションをとる三人。

ユリ子 そう、テラ・フォーミング!!ハハハ・・・。
アキ (小声で)嫌な笑い方。
ユリ子 なあ聞きたい?なっ聞きたいだろう。 アキ すごい、話したがってる・・・。
ユリ子 どうだ!すこぶる聞きたいだろう。
タケシ いいから話せよ!
アキ (小声で)すこぶるってよう。
ユリ子 テラ・フォーミング。つまり火星とか金星を地球型生命が定着出来るように環
  境を改造するって事なの。つまり、惑星のリフォーム。惑星地球化計画と言った意
  味。
タケシ えーそんなの無理だよ、SFだよ。
ユリ子 そんな事無いのよ。本気で大まじめに研究している人もいるんだから。まず、
  とにかく火星を暖めるの。たとえば温室効果ガスとかを使ってね。
ケン フロンガスとか地球温暖化の原因とかにもなってるアレ?
ユリ子 そう、そうして凍りついた氷を解かし、大気中に水蒸気と二酸化炭素が増えて
  温室効果が働き、気温が暖かく保たれるようになってくる。そしたらアレ、藻類と
  か植物を利用するの。
アキ 光合成だね。
ユリ子 そうすれば火星の大気にも酸素をもたらすことができるかもしれないというわ
  け。簡単に超特急で話すとね・・・・。
ケン 地球と同じ大気が出来て雨も降る、なるほど。
アキ 雨?
ケン 雨!
タケシ わちゃあ、降ってきたよー。

     四人は等間隔にシャッターに背中をぺたりと付けて、雨宿り。

タケシ だからいわんこっちゃ無い。
ケン 夕立だろすぐやむって。

     次第に雨足がかなり強まって、辺りもドンドン暗くなって行く。
     四人は何も言葉を交わそうとしない。徐々に退屈そうに宙をみつめる。

アキ でも、そうなったら凄いね・・・。
タケシ 間にあいっこないよ・・・。
ユリ子 そう、ずっと未来の話・・・。
ケン やっぱ、そんなのできっこないよ・・・。

     雨は降り続ける。

     暗転。

 

   第二場『ホビーキシダ』

     夜も更けるとやがて雨も上がり、雲の隙間から月明かりも覗かせる。
     不吉な何かを知らせるかの如く遠くで犬の遠吠えがきこえる。
     薄暗い月明かりの中、黒い影が街の中を横切る。
     それが消えてゆくと、やがてちょこちょこと怯えたようすでなにやら
     ぶつぶつ文句を言いながらユリ子登場。

ユリ子 うわー、すっかり遅くなっちゃった。モー何でだろう。強がり言って一人で帰
  れるなんて言っちゃったけど、やっぱり送ってもらうんだったよ。なんて私ってこ
  うイジッパリなんだろ。つくづくそう思うよ。いやー何よ暗いじゃない。なんか怖
  いじゃないよもー、早く帰らないとっ!って、私は誰に何を説明してるのよ。

     後ろから近づく黒い影が転がっていた空き缶を足に引っかけると乾い
     た音を立ててアスファルトの地面を転がり出す。
     SE=カラン!カラア〜ン!

ユリ子 うわああ誰!?

     ユリ子、裏返った声を上げ振り返るが不用意に声を出してしまった事
     をとりつくろうように、

ユリ子 はっ!ごめんなさいー、あはははは、こんばんわー・・・誰かいるんですか?

     にじり寄る黒い影。

ユリ子 なんですかあああ?
怪人 ・・・・・・。
ユリ子 ど、どうもおおおおお、てっ?何よおおおおおお・・・・。

     その姿をあらわす怪人。

ユリ子 ぎゃああああああああああああ!

     怪人、翼を広げて何か粉を振りまけると、羽根を広げてそのまま滑空
     するようにさって行く。

ユリ子 ぎゃああああああああああああ!なっ!?何よったら何よー!・・・・・・・・
  ・・・・なによこれ、のりたま!?ちょっーと待ってよー。頭プッツンしてるんじゃ
  ないの!もおおおおお!何でのりたまなのよー?

     怖いめにあった子供のように今にも泣き出しそうな顔を浮かべ、

ユリ子 むかつくー!

     暗転。

     夜が明けて、どうやら雨もあがったようだ。弱々しい冬の朝日がせい
     いっぱいキラキラと光ってる感じ。商店街に訪れる人はいないようだ。
     ケンはせっせと店を開ける準備をしている。
     そこにアキが出てくる。ケンはアキと二人だと口数は少ない。

アキ 猫がね、来るの。だからペットボトル。
ケン ・・・・。
アキ あれ風鈴はずしたんだ・・・。
ケン ・・・・・。
アキ 冬だから?
ケン ・・・・・。
アキ そうだヒヤシンス、冬だから。
ケン ・・・・・。
アキ 植木でもしようよ。一緒にやるんだよ。この辺とか、って聞いてる?
ケン ・・・んっ?うん。

     アキは左手にはめられた指輪を太陽にかざしながら、寂しそうな顔で
     じっと見つめ静かな口調で兄に問いかける。

アキ ねえ・・・・?
ケン ・・・・・。
アキ ねえ・・私がもしも、もしもよ。この家、この店・・・を出ていったとしても、
  一人でもこの店続けるつもり?
ケン ・・・んっ?うん。
アキ あっそう。
ケン ・・・!?・・・・あっ、アキ何処へいくんだ?
アキ あっ、大丈夫。夕方までには戻ると思うから。
ケン ・・・んっ、ああ。

     そこに玩具屋のご主人、岸田文夫(42)がやって来る。大股でやって
     来る。手にはレトリックなデザインのロボットを大事そうに持ってい
     る。

岸田 アキちゃんだっけー大きくなったねー。どうだい調子は?
アキ はあ・・?
岸田 ・・・おん、イヤーいいんだよ、いいんだよ。君は人見知りする子だったねー。
  そうだ、そうだった、小さい時からそうだった、そうだったよー、・・・おん。気
  にしなくていいんだよ・・・おん。女の子はねえ、おとなしいぐらいがしおらしく
  ていいんだよ、花のようにねー、しおらしくねー、お花さんだねー・・・おん。そ
  れをねえ、わからないヤツが多いんだよ・・・おん。
アキ ですか。
岸田 オハナーだねー、そのてん安心・・・・・・・(小さな声で)あんしんパパ。
アキ へっ?
岸田 あっ・・・・・・・・。
アキ ・・・なんですか?

     急に凄い事を思いついた文夫(42)、店においてあるバナナとりんご
     を手に持ちこう繰り出す。

岸田 バナナとりんご、どっちがミカン?
アキ ・・・・はあ?
岸田 ・・・・・おん。
アキ えっ・・・・・・・・・・・・?
岸田 だからー、バナナとりんご、どっちがミカンだ?サーとびきり素敵な問題だぞ。
アキ えっ・・・・・・・・・・・・?
岸田 たとえばフルーツのはなし・・・・・・・・・おん。
アキ えっ・・・・・・・・・・・・?
岸田 わっかるかなあ?わからないかな?・・・・おん。

     ただただ訳がわからず、この空気をどうのりきったらいいかわからな
     いアキ。

アキ クラ、クラ、クラ、クラ・・・クラタ、ヤスアキ、タリロリポップン・・・・。
  (意味不明を小声でブツブツと)

     戸惑い動揺するさまを見て気分が高揚する岸田文夫(42)が変な声を
     漏らしそうになる。
     その一部始終をどうしても好きになれない芸人のネタを観るかのよう
     な表情で何も言わずに見ているケン。

岸田 タッハッ!・・・・クックク・・ミカンだ・・・?

     そこにえらい血相を変えてクリス登場。文夫(42)に耳打ちをする。

岸田 どうした!
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田  えっ!?マリモ人形?
アキ (小声で)マリモ人形?

     その一言で周りのみんなは釘付けに。否定するリアクションをするク
     リス。

岸田 なに?そうゆう話しじゃないの?
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。

     何時しかユリ子もやってきて、その様子が気になっている。

クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 おん!それはアレか?信頼出来る情報筋のはなしか?メキシコ共闘戦線サイドの
  話しだな。
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 ミキハウス!?

     また否定するリアクションをするクリス。

クリス ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 ああ!ミルク・ライスね・・・おん!それならオッケイ!
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 おん!
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 おん!ハッハ。
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 おん!ハハハ。
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ(と、大笑いを始める)
  ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ、もうクリスたら・・・
  ・ヒゲ!・・クリスそれ!・・・・くすぐったい・・・クリス、さっきから耳元で
  ヒゲがくすぐたいから・・・ヒゲモジャー!
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 おん、わかった!
クリス ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ、ゴニョ・・・・・・。
岸田 わかったよ!じゃあ、そうゆう事で。

     ひととおり話し終えると走って去ってゆくクリス。

岸田  ナニ!君たち?だめよ、だめよ、だめよー。これはオトナの話しなんだからー。
  関係ない話し。しかし、あれだー。全く不景気でまいるよねえ、(ケンに)チミ
  はーどう思うかね、実際。
ケン はあ?
岸田 たくっ!まいったよー最近の若いもんよー。危機感とゆうモノをまるっきり持ち
   合わせていない。実際、なあ、兄ちゃん!兄ちゃん!なあ。
ケン はあ?
岸田 ホント、今月ピンチなんだからーイヤだ、イヤだ。生きるってつらいねえー。

     とかなんとか言いながら、去ってゆく岸田。

アキ で、今の誰?私、あんな人しらないよー。
ケン ほら、商店街の奧の玩具屋の。
ユリ子 はいはい、ホビーキシダ。
アキ むかしよく行った、行った。二十円もって、ガチャンコロコロ。
ユリ子 ガチャガチャでしょ?
アキ いやいや、ガチャンコロコロ。
ケン 昔はいいオッチャンだったのになー。
ユリ子 でも最後のアレは悪意としか捉えようがないわね。
アキ かしら。
ユリ子 あっそうだ。悪意といえば聞いて聞いて、ヒドイんだから。昨日向こうで夜中
  変なヤツにのりたまぶっかけられたんだよー。ちょっと、どう思う?信じられない
  でしょー。ねえ頭くるでしょ、のりたまだよ!のりたま!普通、人に、見ず知らず
  のあかの他人に夜道でのりたまぶっかけたりする?よく考えて。のりたまだよ、の
  りたま。のりたまって言ったら丸美屋のふりかけ、信じられる?ふりかけだよ。
  あったかご飯にかけるんだったらわかるよ。それを人にぶっかけるんだよ。どう思
  う?ねえ、頭くると思わない。非人道的と言っても言い過ぎじゃあないよねえ。ど
  う思う。
アキ ユリ子、ゴメン。私もういかなくちゃ。
ユリ子 なの。
ケン なあアキ。最近オトナでも変なヤツ多いから気を付けろよ。実際、誰も信じられ
  ないぞ。
アキ うん。なんか・・・わかった・・・。

     なんか不安げに去ってゆくアキ。

ユリ子 坂田兄はどう思うの・・・。
ケン ユリちゃんもさあ、夜はあまり一人で出歩いたりしないようにね・・・。おかし
  なヤツは多いけど、手放し笑ってられるっていうのはどうやらちょっと難しいみた
  いだし・・・。
ユリ子 何よそれ。わかってるつうに。ホントいがんでるよ。坂田兄も気を付けろよ。

     背中で多く語っているようなそぶりでさって行くユリ子。

ケン たいくつだな。


   第三場『遠くの星から来た人造人間』

     得体の知れないメカのたくさん付いたイカス帽子をかぶったヘンテコ
     リンな男がやって来る。頭を重そうに、ふらふらと、ヘンテコリン軌
     道を描き、独り言をブツブツいいながら絵描きや写真家が構図をきめ
     る仕草。それで綿密に何かを思案している。やがてロケーションに満
     足したのか、

パリオ おーし!ぜんぜん、オッケイ!ここで決まりだな。

     その場で座り込み、何やらゴソゴソと自分の荷物を漁りだすように何
     かを探している。この男の仕草はなにをとってもヘンテコリンで手足
     の長い外国のナナフシのようだ。

パリオ おかしいなあ、たしかこの辺にしまったと思ったんだけどなあ・・・・。何処
  にナイナイしたかなー・・・おおあった。これだよ!これー、コイツだよー。

     胡散臭く舌を出してしてやったりの表情を浮かべると、ヘンテコリン
     な紙を取り出し後ろのシャッターにペタリと張り付ける。その紙には
     こう書かれている。
     「電子頭脳屋、分析結果売ります!!」
     満足げにアグラをかくと、期待いっぱいと言わんばかりにくねくねと
     揺れ出すさまがまた普通ではない。やっぱり、南米とかの手足の長い
     昆虫のようである。ケンはまたしてもそれを一部始終見ていたわけで。

ケン メカ・・・・・・?

     虫が街灯の光に惹かれるが如く、ケンはメカにその興味が集中してゆ
     く。気がつくと、すでにパリオのツムジの近くを覗きこんでいた。

ケン あの・・?これって、やっぱりアレですかー・・・?
パリオ ああコレ?ほんモノですよ!
ケン へっ?
パリオ 電子頭脳、見たこと無い?そうか。きっとニセモノ、インチキとかそういう風
  な憶測を立てたでしょ?
ケン ほう・・・、まあ・・・、正直・・・・。
パリオ でもね本物なんだよー、電子頭脳。ちょっと型は古いけど正真正銘、絶体絶命
  のほんもの。
ケン コンピューターですか?
パリオ 電子頭脳!!
ケン わかりました。・・・・でっ、どんな事ができるんですか?そのー・・・。
パリオ 電子頭脳?
ケン はあ。
パリオ 何でも出来るよー。だって電子頭脳だよ。イロイロ出来るよー。
ケン たとえば。
パリオ たとえば、主に・・・・ナニにしよう、ナニがしたい?
ケン 「ナニがしたい」と言われても・・・・。じゃあ・・・やっぱり・・・なんか凄
  い事が出来たりするんですか?
パリオ たとえば?
ケン それをオレが聞いてるんだろー。
パリオ た・と・え・ば?キミが新しい憶測をたててみて。
ケン じゃあ、人知を越えた凄い事とか、凄い桁の計算とか?
パリオ おお、それいいなあ!それ、いただき!でもなー、算数はなあー。
ケン 何メモしてるんだよ。違うだろ、オレが聞いているのは!
パリオ ああコレね・・・コレは電子頭脳。
ケン それはなんべんも聞いた、たいがい聞いた、電子頭脳な。それで・・・。
パリオ つまり、「考え」「思考」を売ろうとしているんだ。いろいろ売るよ。人間の
  頭脳で生産できるモノならなんでもね。
ケン 「考え」「思考」を売っているって・・・・ほう。でもそんなモノ買う人いる
  の?
パリオ キミなんか買うんじゃないかなあ・・・。いや買う。百パー買うと思うよ・・
  ・・うん。
ケン オレ?オレはたぶん必要ない。もう大人だから善悪の判断だってできるし、自分
  の考えだってちゃんと持ってる。必要な情報はテレビや新聞を観ていれば得ること
  ができるし、わからないことは図書館で本を見れば調べることもできる。だろ?
パリオ そうゆう常識とか情報とか知識とかじゃなくて、私が言っているのは、「考
  え」「思考」の事なんだ・・この電子頭脳を使ってね。

     ケンはなにかもの凄く気になって来た。

ケン でっ・・その・・キミの電子頭脳、「思考」てゆうのはいくらなんだい?
パリオ うーんそいつは、アレだよ。それはね、イロイロキミのトコロはアレ、フルー
  ツのお店だろ?うーんだったら、「ちょっとした思いつき」ならそうだな、バナナ
  一本。「アイディア」とか「提案」ならリンゴを一つもらおう。そのほかにも「わ
  くわくするような計画」「ごもっともな意見」「ありがちなたとえ話」「あり得な
  い何かについての考察」なんてのもあるよ。
ケン じゃあ試しに一つ貰おうかな、その・・・。
パリオ なんにする?
ケン 「思いつき」一つくださいな。
パリオ じゃあバナナ一本ね。

     ケンは店に並んだバナナを一本もぎり、パリオにわたす。

ケン これで、いい?
パリオ コレコレ。ぜんぜん、オッケイ!

     男は仰々しく喜びならバナナを受け取り、機関車に石炭をくべるよう
     な勢いでバナナをペロリとたいらげる。と、ドシリと座り直し頭のメ
     カに集中しヘビ使いのようにクネクネと体を揺すり出す。

パリオ いくよーん。Θ?ρ◎Φ◎δ!・・θЮФ@Θσ!!・・Θ?ρ!・・Θ?
  ρ!・・・ξ!!

     ピコピコな電子音。
     パリオは得体の知れない呪文をとなえた。その声は「天使の歌声」そ
     れと似て非なるモノ、ソレであった。

パリオ こんなのはどうだい?靴の底に押しピンをさして踊ったら、音楽もできるし
、   それにあわせて踊れるよ。
ケン そんな事できないよ。押しピンなんて付けたら靴がダメになってしまうじゃない
  か。だから・・・・。
パリオ キミが注文したのは思いつきだよ。なにか実際にやりたいのなら計画を頼めば
  よかったんだよ。思いつきと言うのはただの考え。どこからともなくやってきて
、   ココへね、誰かをワクワクさせたり、楽しくさせて消えてゆく。でも、その分すご
  く自由だからね、何時だって思いめぐらせて、イロイロ楽しんだりできるだろ。
ケン そうか・・・そうなのか?
パリオ わかった?
ケン わからん。
パリオ むう・・・むずかしい?
ケン わからないけど、でもなんか、そうゆう考えかたっていいよね。
パリオ わかってるじゃん。私の名前はポーチュリア・パリオ・ハクサファ。
ケン あの、どこからきたの?
パリオ (空の方を指差して)あっち。
ケン そら?
パリオ うんん・・・でもね、また憶測でわるいのだが、キミはきっと私の素性を知っ
  た所で態度や付き合い方を変えないだろう。
ケン ほう。
パリオ だったら提案なのだが、私は遠くの星から来た人造人間だと思うのはどうだろ
  うか。そう思うことで暇なときにでも私の事をああだこうだと勝手にいろいろ想像
  して、クスクス笑うこともできるだろ。
ケン ・・・うん。
パリオ どう?コレが憶測。
ケン わかった、その提案にのろう。なんか面白そうだし。君は遠くの星からきたんだ
  ね。

     嬉しくなって笑いがこみあげてくるパリオ。それにつられてちょっと
     だけ自分も嬉しくなるケン。

ケン そんなに嬉しい?
パリオ 自分の憶測が事実だった時ほど嬉しくなるものはない。
ケン どういう事?
パリオ キミとは仲良くなれそうだ。さっき、そう、額でピキッと感じたよ。
ケン ピキッと?
パリオ 額でね。
ケン 額で・・・・?

     一部始終をみていたクリス、一人つぶやく。

クリス ヒタイデ、ピキット、ジンゾウニンゲン・・・・。


   第四場『考え売ります』

     街中から始まった小さな変化。全てここからはじまった。
     街中のみんながうわさをはじめると、町中に憶測が広がる。
     と、シノプス登場。(シノプスは「考え」「思考」を擬人化した存在)
     町中に「オクソク」がぞろぞろとわいてくる。「オクソク」は囁くよ
     うに「憶測・・」と鳴く。

憶測A 「憶測・・」。
憶測B 「憶測・・」。
憶測C 「憶測・・」。
憶測A 「憶測・・」空想科学のはなしですか?
憶測B いやホントの話らしい「憶測・・」。
憶測C 「憶測・・」遠くの星から来たんだって。
憶測A 宇宙人?
憶測B 「憶測・・」人造人間なんだって。
憶測C え?なになに?
憶測A 「憶測・・」人造って事は人に創られたの?
憶測B 何のために人が人間を創ったの?「憶測・・」。
憶測C 「憶測・・」人は人間を創れるの?
憶測A 「憶測・・」人間を創ることができるのは神様だけで。
憶測B え?宇宙人じゃないわけ?「憶測・・」。
憶測C 「憶測・・」人が宇宙人を創ったの?
憶測A 「憶測・・」だから宇宙から来た人造人間なんでしょ?
憶測B 「憶測・・」何為に創られたわからない宇宙人造人間ってわけか。
憶測C なにそれ科学考証むちゃくちゃ「憶測・・」。
憶測A 科学考証?それって重要な事なの「憶測・・」。
憶測BC 重要なの!(小声で)ネビュラー賞ねらってるんだから・・・。
憶測A (小声で)ネビュラー賞って言うかSFにもなってないし・・「憶測・・・」。
憶測A 「憶測・・」。
憶測B 「憶測・・」。
憶測C 「憶測・・」。

     そこに「ヤバイカンガエ」が滑るように「オクソク」の前を横切る。
     手をあげて畏縮してしまう「オクソク」。
     行きすぎる「ヤバイカンガエ」。
     そこにパリオ登場。
     何もなかったように「オクソク」たちは消えてゆく。
     パリオはしゃがみ込み、大きく伸びをしながら大きなアクビをして眠
     り込んでしまう。
     クリスが日本語のテキストらしき物を片手に熱心に朗読している。

クリス ナツ・ハナビ・アキ・モミジ・ベツバラ・ブタバラ・・・。
ユリ子 なにあれ?
ケン 日本語の勉強。
クリス 秋ト言イエバモミジデスネ。
一同 (うなずく)
クリス 紅葉ガ色ヅクトテモ美シイ季節デス。
一同 (うなずく)
クリス 私ヲモミジマミレニシテクダサイ。
一同 (うなずく)・・・!ええっ!?
クリス 私ヲ一気ニ、モミジマミレニシテクダサイ。
一同 (首を横に振る)
クリス ウーン、ナンカ違ウナア?
ユリ子 熱心だね。
クリス ウーン、モウアキタ、プッチンデモ、ショウ。

     懐からラバーキャップをとりだしプチプチ潰しはじめる。

ユリ子 なんなのよあれは?
ケン クリスさん、牧師さんなんだって。
アキ プエルトリコから来たとか来ないとか言ってた、アレ?宣教師。
ユリ子 宣教師?プエルトリコってナニ派よ?
アキ プエルトリコって言ったら、「チュパカブラ」がいるんだよね。
ケン チュパカブラ!?
ユリ子 知らない?
アキ チュパカブラって言ったら、宇宙怪獣だよね。
ケン 宇宙怪獣?
ユリ子 そんな感じでいいんじゃない、どうせ関係ないし・・・。

     その話を聞いて凄い形相で三人の方を見ているクリス。
     じっと見つめると、仰々しくフラメンコギターの情熱的なメロディーが
     流れる。

クリス イカナクチャ・・・。ベツバラ・ブタバラ・ベツバラ・ブタバラ。

     と言っていそいそと帰っていくクリス牧師。

一同 でっ!

     拍子木の音一発。(かわいらしい感じで)
     拍子木と同時に一斉にパリオを凝視、パタパタと駆け寄る一同。

ユリ子 やっぱ、コイツだよね。
アキ みんな気にならないのかなーって。
ユリ子 ホントだコレ、ココ、メカ。(メカに対してグリグリする)
ケン ああ、ユリちゃん!あんまり、グリグリしたらダメだって。
ユリ子 シールドをこんなにわける必要あるのかしら、ジャンパーだらけだし。(その
  他、適切なメカ的なツッコミ)
アキ コレがその彼?
ユリ子 人造人間?
アキ えー宇宙人て言ってたじゃん。銀色じゃないじゃん。
ユリ子 銀色?
ケン だから彼曰く「遠くの星から来た人造人間」なんだって。
アキ えーどうゆう事?
ユリ子 遠くの星で製造された人型の何かなわけでしょ?
アキ 「何か」なの?
ケン なんだよ何かって?
アキ ナニカさ〜ん。
ケン なんだよ、ナニカさんって?
アキ それにしてもホントに宇宙っぽい寝方してるね。宇宙の寝方だね。
ユリ子 寝相が悪いだけでしょう。
アキ  アッ!動いた!ナニカさ〜ん、ナニカさ〜ん。聞こえますか?ナニカさあ〜
  ん!

     SE=ジャ〜ン!(MACの起動音)

一同 あっ起きた。
アキ ファーストコンタクト。
ユリ子 第二種接近遭遇。
パリオ うわー!なんだキミ達は!θЮФ@Θσ!!だなあああああ!!!!
一同 うわー!θЮФ@Θσ!!って、なんだ〜!
パリオ ああ、よかった、よかった、ケンか。ほんとよかった。どうした?
ケン 大丈夫?寝てた?起こしちゃった?
パリオ フー、ああ、怖い夢でもみたんだろう。結構ヤばっかたけどねえ、もう大丈
  夫。今日はなんのようだい?
ケン なにがヤばっかたの?
パリオ このお嬢さんがたは?・・・フー。
ケン 紹介するよ。コレが家の妹でアキ。そんで、こっちがその友達の丘ユリ子ちゃ
  ん。
アキ どうもよろしく。
パリオ ああどうも。私はポーチュリア・パリオ・ハクサファ。
アキ 遠くの星からやって来たんですよね?
パリオ うーん、そうですね。ご想像にお任せです。
ユリ子 やっぱり世捨て人なんじゃないの?
ケン ユリちゃん。
アキ ナニカさんだよー。
パリオ ナニカさん・・・?
ケン ああパリオごめん。この子たち、ちょっとアレだから。
アキ アレってなによ。
ユリ子 そうよ、今のは男尊女卑の無礼発言のたぐいよ。
パリオ それいい・・・気にいった・・・。
一同 えっ?
パリオ ナニカさんか〜。
アキ うん。ねえ、イイでしょ。
パリオ アキちゃんとユリちゃんだね。どうぞよろしく。ソレじゃあ、今日も営業を開
  始するよ

。      パタっと営業中の札を表にする。

ユリ子 コレで営業開始ってってわけだ。
アキ 考えを売るんだよねえ。
パリオ 私は電子頭脳屋。イロイロな考えを売るよ。
アキ じゃあ早速ですが私たちに「素敵な計画」を下さい。
パリオ 素敵な計画かあ、それはイイねえ。イイから素敵な考えなんだね。そうだなあ
  ・・・。さっき起きたばかりだから、朝食にバナナが食べたいと思っていたところ
  だから、バナナ二本でどうだい?
アキ バナナ二本で足りる?
パリオ 十分だよ。まってて、今素敵な考えを用意するからね。
アキ ああ、じゃなくて朝ご飯?
パリオ ああ、朝ご飯ね。ソレも十分だよ。いくらバナナが美味しくても食べ過ぎはよ
  くない。物事は何事もほどほどがいいんだ。それにコレは商売だからね。同情をひ
  いて稼ぐことを簡単にすると、商売は長続きしなくなるからね。
ユリ子 経営哲学ってやつね。
ケン とびきりのヤツを用意してやってよ。
パリオ ゼンゼン任せておいて。とびきりのヤツを期待してて。それじゃあ!「素敵な
  計画」いくよ〜ん!Θ?ρ◎Φ◎δ!・・θЮФ@Θσ!!・・Θ?ρ!・・Θ?
  ρ!・・・ξ!!

     パリオは得体の知れない呪文をとなえた。その声は「天使の歌声」そ
     れと似て非なるモノ、ソレであった。

パリオ 素敵な計画をひらめいたよ。もちろん計画だからねえ、とりあえず実行すると
  しよう。それじゃあ、目を閉じて。そしたらねえ「感動したこと」を思い出すん
  だ。最近の事でも、昔の事でもいいよ。でもできたら最近感動したことを思い出し
  てみて。思いついた?ソレで一つ思い出せたら、一つ体を動かす。簡単でしょ。頭
  の中で音楽を鳴らすんだ。じゃあやってみて・・・。
一同 ・・・・。
パリオ こんな感じ。

     パタン・パタンとパリオは素敵に振る舞ってみせた。

一同 ・・・・。
パリオ あれ、どうしたの?感動っていうのは心が動いたときの情動ってやつだよ。
ユリ子 それはわかるけど・・・。
アキ ねえ・・・。
ケン 感動したことを思い出せって言われても、子供の頃のように世界は感動に満ちて
  いない。感動を求めて辺りを見渡しても、あるのはまったくゆとりのない現実。
ユリ子 悲しいけど、これって現実なのよね。
アキ ねえ・・・。
パリオ うーん、そうか・・・。それはどうやら難しい事みたいだね。簡単な事なんだ
  けどなあ。
アキ 難しいよ・・・。
ユリ子 それにいざとなると情けない話し、こういう時どう振る舞っていいかわからな
  い。経験と実績のあるものにしか正直自身がもてないっていうか・・・。
パリオ 経験と実績。それは誰もが信頼を寄せる強い力だ。でもね、私たちは全て感情
  や思考によって動いている。そうやって生(せい)をつないで生きている。そう
  やって世界を、全てを認識している。自分の知っている古い世界を確認するのも大
  事だけど、新しい感情との出会い、あたらしい全てを動かし、世界を創る事も同時
  にできるんじゃない。
ユリ子 あたらしい全てを動かし、世界を創る。
ケン ソレが感動?
パリオ ソレが感動のすごいとこ。だから、感動したりしたことがあったら描いておく
  といい。地面に描いてもイイ、描ける石とかで。
アキ 地面に描いてもすぐ消えちゃう。
パリオ 大丈夫消えてもいい。一度かいたら、忘れにくくなるでしょう。忘れそうに
  なったらまた思い出せばいい。そしたら、また新しい世界に生まれ変わるかもしれ
  ないでしょ。わかった?
ユリ子 わからん。
パリオ むう・・・むずかしい?
アキ わからないけど、でもなんかそうゆう考えかたっていいよね。
パリオ わかってるじゃん。じゃあ今度は「あったらいいな」でやってみよう。さっき
  と一緒で目を閉じて「あったらいいな」と思うことを思い出すんだ。アリもしない
  ことでもいいから、アーだコーだ考えるの。ミンナ好きだろ。ソレで一つ思い出せ
  たら、一つ体を動かすんだよ。

     目を閉じて、みんな体を揺さぶり、呼吸をととのえ集中しだす。

パリオ 準備はいい?
一同 (ゆっくりうなずく)
パリオ じゃあ頭の中で音楽がなるよ・・・。

     やがて音楽に包まれる。体が自然と動き出す。みんな目を閉じたまま
     シンクロしている。あり得ない話だがコレは「あったらいいなー」と
     いうことで・・・。
     やがて、仕事で通りかかったタケシが不思議そうに眺めていたが、ぎ
     こちなく、混ざろうとしていた。

タケシ えっ?・・・これって、ナニ?・・・えっ?・・・ナニまつり・・・・?

     モノローグ。

ケン もしも子供のアノ頃のように世界が感動に満ちていたらイイよねえ・・・。


   第五場『描ける石』

     電子頭脳屋にいろんな人が考えを求めてやって来るようになった。
     留守番電話の悩み事相談のように次々といろんな人が意見を求めてやっ
     てくる。
     SE=町中の騒音
     自動車や雑踏、話し声、情報にみちあふれている。

男の声 (発信音・ピーッ)あのー、二十七才会社員です。私の悩みを聞いてくださ
  い。・・・・・・私は人生に退屈しています。どうしたらよいのでしょうか?どう
  か生きる方法をおしえてください。
パリオ 退屈な人生ほど有意義な生き方はありません。暇があればいろいろな考えをめ
  ぐらせる時間もおしいと思わないでしょ。良くも悪くもあなたがそれに気付き知る
  ときがかならず来ると思いますよ。
男の声 ・・・ありがとうございます。(あまり納得していない様子)
女の声 (ピーッ)二十三才、家事てつやってます。私、どうしても幸せになりたいん
  です。どうすれば幸せになれるでしょうか?どうかお知恵をかしください。
パリオ 寝る前に「すてきな夢が見れるように」とそう念じながら、枕をやさしく三回
  たたくのです。
女の声 そんなことで本当に幸せになれるのですか?
パリオ かならず実行してください。そして、それがむずかしいことでない事をしって
  ください。
女の声 ・・・・・。
パリオ ヨロシイでしょうか?

     もの凄い勢いでパリオにむかって女性の靴が片方だけとんでくる。

パリオ ハッハハハハハ。
アキ ナニカさんのお店、凄い流行ってるね。
ケン んっ?・・・うん・・・・。

     張り紙にはこう追加されている。「よく売れています」。突如岸田がやっ
     て来る。

岸田 随分景気がいいですね。
ケン はっ?
岸田 考えましたね、あんなのを仕込むなんて。
ケン 彼と家の店は関係ないですから。
岸田 じゃあ、今度は大人の話をしましょう。
ケン どうぞ。
岸田 こんなトコロでなく私の店でちゃんとしましょうよ。
ケン ・・・・・。
岸田 「お金」のはなし・・・わかってますよねえ?
ケン わかりました。

     重い空気を引きずって、岸田とケンが出てゆく。
     すると血相変えて飛び出してくる、ユリ子の母。

アキ あっ、ユリちゃんのおばちゃん。
ユリ母 あら、アキちゃん、結婚なさるんですねえ。
アキ えっ?
ユリ母 ユリ子から聞きましたよ。
アキ ああ・・・あのー、その話なんですけど・・・。
ユリ母 あら、ご免なさいナイショでしたわね。でもねー、アキちゃんがねえー。こん
  なちっちゃな時からしってるから・・・。まあ、そのお話はまた今度でも。ソレよ
  りアレですワ!

     と言いガッキっとパリオをにらみつけ、そのままの目の前に。
     太鼓の音。

ユリ母 あのー、少しお話させてもらってもいいですか?
パリオ はい、どうぞ。
ユリ母 私が聞いた話によると、貴方はゼンゼン役にたたない考えとやらを売っている
  そうですねえ。
パリオ 確かに私は考えを売っていますが、役にたたないかどうかは・・・・。
ユリ母 あなたはそのミョウチクリンな機械で考えを、ただ自分でつくっているんだ。
パリオ そうですよ。
ユリ母 インチキでしょ?
パリオ なにがですか?私が売っている考えの事ですか?
ユリ母 その頭のメカです。インチキでしょ?
パリオ 電子頭脳・・・!?
ユリ母 インチキだって潔く認めなさい。何が電子頭脳ですか、へぼいし。それに貴方
  は自分が宇宙人だとか人造人間だとか、ホラばっかり吹いて回ってるそうじゃあり
  ませんか。
パリオ 電子頭脳は伊達じゃない!
ユリ母 なんですって?
パリオ だから・・・・(もっとアムロみたく)電子頭脳は伊達じゃない!
ユリ母 ・・・はあ?まあ百歩ゆずって、その電子頭脳とかなんとかいうのが本物とし
  てですよ、そもそも貴方の売る思考、考えは一体なんの役に立つというのですか?
  (小声で)ほんと、へぼいし。

     パリオはゴロゴロと転がり考え、

パリオ 考えは頭の中に、ココにね、新鮮な空気や柔らかい日射しが入ってくる素敵な
  窓を開くんです。それがあれば考えるために立ち止まるし、もしかしたら今まで見
  たこともないものがピッキ!と見えてくるかもしれません。そうすれば・・・。
ユリ母 それは比喩ですか?ばかばかしい。あなたの考えなんてねえ、なんの役にもた
  ちません。たたないことに決定しました。役に立たない事を考えるなんて、誰に
  とってもなんの利益にもなりません。だから確実にへぼいしインチキです。だから
  店をたたんで即刻立ち去りなさい。(小声で)ほんと、へぼいし。

     いつも元気なパリオが突然シュンとしてしまう。かなりの落胆ぶりだ。
     そして悲しそうにユリ子の母を見た。

パリオ 役に立つとはどうゆうことなのでしょうか?役に立たないとはどうゆうことで
  しょうか?この星からまったく役に立たないモノを全て切り取って無くしたとして
  も、私たちは私たちでいられるのでしょうか?貴方は貴方でいられるのでしょう
  か?そもそも私たちは、この星にどんな役にたっているんですかねえ。
ユリ母 それは屁理屈です。そんな事言って話をすり替え、私を悪者にしようとして
  らっしゃる。ごまかそうとしてもゼンゼンだめです。
パリオ ごまかそうとなんかしてません。ゼンゼンいいんです。
ユリ母 いいや!ゼンゼンだめなんです。
パリオ いーや!ゼンゼンいいんです。
ユリ母 いいや!ゼンゼンだめなんです。
パリオ いーや!ゼンゼンいいんです。

     二人顔を見合わせて「イーっ」て。

ユリ母 貴方と話をしても何も意味がないことが今はっきりわかりました。
パリオ わかりました。今から貴方も納得いくような「ごもっともな意見」を用意しま
  すから、それを一度試してみて下さい。

  といって考え出すパリオ。電子頭脳が光り出すそしてパリオが歌い出す。

ユリ母 ウキョエエエエエッ!!

     点滅するメカにクラクラして妙な奇声をはっしガッシッと電子頭脳を
     鷲掴みにするユリ母。

パリオ いててててっ!
ユリ母 ほーっ!偽物にしてはよく出来てますわね、コレ。グレイトですワでございま
  すですワ。5ボルト仕様の点滅ダイオードが、1つ2つ3つ・・・・・とゆうこと
  はこの中には9ボルトの角電池が・・・・ウキョエエエエエッ!!

     変に興奮しパリオをグリグリポカポカいろいろするユリ母。

パリオ アノー・・・。
ユリ母 ングッ!ウマ!関心している場合じゃないですわ。ミノさんのヤツが始まっ
  ちゃうワ!絶対、一方的にだめですからねー、ミョウチクリン、@@色!

     といって去ってゆくユリ母。

パリオ フゥ〜。
アキ ナニカさん・・。だいぶやられちゃったね。
パリオ うまくいかない時はある・・・トホホ。
アキ ホントはいい人なんだけどな。まじめ過ぎるというか・・・。
パリオ 仕方がないよ。彼女には彼女の守るべき正義があるから。
アキ 難しいね。

     ナニか彼なりに、腑に落ちない素振りもするも、ナニかを振り切るが
     如く、しっかり前を見据え、

パリオ 今日の営業終了。

     パッタっと札を戻す。そこにもっと落胆した様子のケンが似たような
     境遇で登場。ナニかを振り切るが如くやさしい声で、

ケン 今日の営業終了?
パリオ あっ、ケン・・・・。

     心配そうにアキが続く。

アキ あの、やっぱり、さっきのあれ・・・お金のはなし?
ケン まあな。 アキ どうするの?
ケン どうしたものかな・・・。

     パリオ、ただならぬ空気を察知したかのように、

パリオ ・・・・ケンたちのお店なくなっちゃうのかい?

     ケンはババナを一房パリオに渡す。

ケン コレ食べなよ。
パリオ ?
ケン もう営業外だろ。ソレだったら喰っていけるだろ。
パリオ う・・ありがとう。

     一本もぎり、残りを返そうとする。

ケン イイよ、とっておきな。
パリオ ・・・・。
ケン うん。
アキ うん、「気にしないでいいよ」って・・・・。
パリオ こんな時にどうして優しくしできる?
ケン どうしてだろうな・・・・どうしてだろ。
パリオ わからないのに優しくできる?
ケン うんん、ゼンゼンわかってる・・・・ありがとう。
アキ 損をして得をとらないのがあの人のいい所だから。
ケン そうだな・・・損をしてばかりだ・・・。

     バナナ返そうとするパリオ。

ケン そうゆう意味じゃないよ・・・・うん。
パリオ ?・・・・お礼をさせて。
ケン お礼なんてイイよ。
パリオ ちょっと待ってて。すごくいいのみせるから。

     ゴソゴソと荷物を漁り出す。すると一つの石を取り出す。

パリオ がっひーん!コレ。
ケン なんだ?
パリオ なんだ?
アキ タダの石だ。
パリオ 石にもイロイロある。丸い石もあれば面白い形の石もあるし、その中でもすご
  くいいのがコレ。コレ、描ける石。
ケン カケルイシ。
アキ なんだ「描け石」の事。
パリオ 描ける石!・・・昔はよくコレで絵を描いたんじゃない?
アキ 小さいとき。
ケン 落書き?
パリオ 「カンガエ」を書くよ。

     落ち着いたエカキウタのような歌を歌いながら、地面に描いてゆく。

パリオ イメージを集中して、この子が動き出すトコロを想像してみて。

     すると突然風が吹く(正確にはそんな気がする)。と目の前に「オク
     ソク」がひゅうーってやって来る。クネクネと体を揺すり、「なんだ
     ろうコイツは?」的な雰囲気をかもしだす。

パリオ な〜んだ?
ケン わからないよ〜、こんな変なの見たこと無い。
パリオ いろいろ、あれこれ想像してみて。
アキ 宇宙人?
パリオ 面白いけどコレはちょっとちがう。他の星の人とかじゃないよ。これはある
  「考え」のイメージ。宇宙じゃなくて頭の中にすんでる。
アキ こんなのがいるの?
パリオ 本当は形なんて無いんだけど、形にするとこんな感じかなって。これがー、多
  分こんなんじゃないかなあと思うコレが「オクソク」。あれこれ真実を想像してみ
  て楽しんだりできる。
ケン 「オクソク」の憶測だね。
アキ ハイ!私、イイ考えを思いついた。今度は私が描くね。

     さっきパリオがやってみせたみたいにアキがやってみせる。
     アキが地面に描くとまた風が目の前をビュンと吹いた。今度は「イイ
     カンガエ」が姿を現す。とても優しい雰囲気なのだが、どことなく寂
     しげだ。

アキ  さて、なんだ。
パリオ なるほどイイ考えだね。
アキ そう。
ケン どうゆう事?
パリオ ホラ「イイカンガエ」だよ・・・うん、とても優しく描けたね。
ケン イイカンガエか・・・。
アキ 素敵でしょ。
パリオ でも、どうしてこんなに寂しげなんだい?
アキ それは・・・・。

     すると後ろからコソコソとまた「オクソク」がやってくる。

アキ まって!憶測は止めて!

     その言葉にビックリして「オクソク」はケンとパリオの後ろにさっと
     身を隠す。

二人 はい。

     小さく手をあげて降参のポーズする二人。ソレを見てアキは少しだけ
     嬉しくなった。そうすると、「イイカンガエ」も少しだけソウ振る舞っ
     てみせた。

     モノローグ

アキ ねえ?ナニカさん・・・「イイカンガエ」はどうですか・・・・?
パリオ 「イイカンガエ」はいつでもそばにいて欲しいと願ってさえいればきっと味方
  してくれるよ・・・。

     途中から見ていたクリス。

クリス 素敵ナ石・・・・スゴイ石・・・・。

(第6場へ続く)