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   第六場『イーちゃんと夏みかん』

     ワルイ考えのイメージ。一転して暗い陰気なイメージ。
     一人ブツブツなにか文句を言いながら通りすぎる岸田。その後ろから
     「ヤバイカンガエ」が追い越さんばかりのスピードでやってくる。岸
     田がはけきる直前に岸田とヤバイカンガエが重なる。
     ガッヒーン!(合体するような音)
     北風がビュンと吹く
     何やらせっせと熱心にヌイモノにいそしむパリオが大きなくしゃみをする

パリオ できた!
アキ ナニカさん、なにやってるの?わあ、なにこれ?ウサギ
パリオ ウナギかな?
アキ 凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い、凄い。

     突然岸田登場、ちょっとようすがおかしい
     パリオのつっくった人形に興味を示したのか、遠巻きで話を聞き込ん
     でいる。が、二人は気づいていない。
     この岸田はダークサイド一歩手前の「一歩手前ダークサイド岸田」だ。

パリオ 欲しい?
アキ 欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、欲しい、コレ売り物?
パリオ もちろんさ、大きい夏みかん一個で売ることにしよう。
アキ え〜っ、いいの?ほんとにいいの?

     気にする素振りをみせるでもなく一番大きな夏みかんを店からチャー
     ととってゆく。
     ケンはただただジジイのように眺めるばかりだった。

アキ じゃあハイ、コレ。
パリオ はいどうぞ。
アキ やったー。わーすごい、すごい。

     ユリ子がやって来る。

ユリ子 なにが凄い?
アキ ああユリ子、これみてみー。ねーなんか凄くない、てゆうかスゴクナイ。
ユリ子 ねえアキ、なにがあったの?
アキ えっ?なにもないけど、やだなあー。

     それでもケンはただただジジイのように眺めるばかりだった。
     話の勢いが減速した頃にやっと岸田に気づく。

ユリ子 なっ!なんなのよアンタちょっと・・・。
アキ あっ!(岸和田セントジョーンズチャーチのCMに出てくる子供のようなブサイ
  クな顔で凍り付く)
ユリ子 さっきからずっといたの?
ケン (声もなく頷くケン)
ユリ子 言ってよー。
ケン アキ、ブサイクな顔になってる。

     SE=ガヒーン!
     鋭敏な神経を持ち合わせた賢者のごとく、ユリ子に一瞥くれると店か
     らバナナとリンゴを一つずつ手にとる。

岸田 お嬢さん。
ユリ子 なっ!なによーおおお。
岸田 バナナとリンゴ、どっちがミカン?
ユリ子 さっそくきたわね。
岸田 バナナとリンゴ、どっちがミカンだ?
ユリ子 ・・・・・そうねえ、私の認識ではバナナは単子葉植物綱香竄目(コウザンモ
  ク)バショウ科。一方リンゴは、双子葉植物綱の離弁花亜綱バラ目バラ科リンゴと
  なるわけ。そして問題はミカン。ミカンは離弁花亜綱ミカン目ミカン科。従って植
  物学的には同じ双子葉植物綱の離弁花亜綱に属するリンゴのほうがバナナよりミカ
  ンに近い種であることになるんだけど、バラ科とミカン科の違いにどれほどの相違
  があって、双子葉植物綱と単子葉植物綱との間にどれほどのわけへだたりがあるの
  か私的にはよくわからない部分もあって・・・一概にそうだと決めつけるのはどう
  かと思うんだけど貴方はどうかんがえてます?
岸田 はあ、自分的には・・・それでおおむね正しいと・・・思います・・・はあ。
ユリ子 そう。
岸田 はあ・・・・。
ユリ子 よかった。
岸田 はあ・・・・。

     SE=チョウッ!(作戦が粉砕される音)
     失意に暮れる岸田。
     ナニもなっかたようにまたおばさんのような世間話を始めるユリ子と
     アキ。
     ジジイのように眺めるばかりのケン、実は以外に冷静に一部始終を眺
     めているパリオ。
     SE=ガヒーン!
     音と共に再起動する岸田、ナニもなかったが如くケンの店で夏みかん
     十個とさっき手にしたバナナとリンゴを購入する。

岸田 コイツを十個とコレとコレをくれ。
ケン お見舞いかなにかですか?
岸田 ・・・・。
ケン @@@@@円です。
岸田 ・・・・・。
ケン ありがとうゴザイマス・・・岸田さん、アノー。
岸田 ・・・・・。鉄板くん、少しいいかなあ。
パリオ ?・・・はい、どうぞ。
岸田 この人形はすばらしいねえ。
パリオ そうですか。
岸田 オリジナルハンドメイドってところがアレだ味があってイイ・・・。
パリオ そんなもんですか?
岸田 いやー実にいいよ・・・コレはイケル。玩具屋歴二十年の私が言うんだから間違
  いないよ・・・おん。
パリオ おだてないでくださいよ。
岸田 で、モノは相談なんだがねー。
パリオ なんですか?
岸田 私にも売ってもらえないだろうか?
パリオ イイですよ。
岸田 じゃあ十個コレと同じモノを用意してもらえないだろうか。
パリオ はあ。
ユリ子 オトナ買い?
岸田 じゃあ十個だからコレ夏みかん十個と1、2、3、4・・・・・・。
パリオ 残念ですが人形十個の値段は夏みかん十五個です。
岸田 えっ?
二人 はっはははははははは。
岸田 うそ?またー、うそでしょ?
二人 はっはははははははは。
岸田 えっ?
パリオ 本当です。
岸田 ・・・・・・ああっ、なんて哀れな鉄板くん。計算ができないんだね。あのね、
  いいかい。夏みかん一個とこの人形一個の交換だからミカンの数は十個・・・わか
  る?・・・・おん。
パリオ いいえ十五個ですよ。
岸田 ムカッ!・・・・・・ああっ鉄板くん!キミは私の事、キライなんだね・・・。
  いや、そんな事は無い!鉄板くんはそんな偏見に満ちた子ではないはずだ。そうか
  わかったぞ。この子達から「ホービーはーウザイからハミゴにしようぜ!」とかな
  んとか言われて泣く泣く仲良くしょうにもできないんだね!そうなんだね!
ユリ子 ちょっとアンタ!さっきから聞いてればいい気になりやがって、何様のつも
  り!
岸田 これは彼と私の問題だ!女、子供はすっこんでろ!
ユリ子 なによー!
アキ まあ落ちついて。
ユリ子 女、子供ってよう。
パリオ イイですか?
岸田 はっ、いいですよ。(ニコリ)
パリオ この人形、イーちゃんって言うんですけどね。
岸田 イーちゃん?
パリオ イーちゃんを一つ作るのは楽しいですが、十個も作るとなるとそれは退屈な作
  業です。毎日せっせと夜なべをしないとできないでしょう。だから、ミカンの数は
  十五個になるんですけど・・・。

     この時、岸田はこの男に商売のなんたるかを問いたい、問いつめたい。
     小一時間ぐらい問いつめたいと思ったがグッとこらえて、

岸田 キミの言い分はよくわかったよ。じゃあ、あと五個用意させて貰うとしよう。そ
  れでいいね。
パリオ 待ってください。問題がもう一つあります。確かに値段は夏みかん十五個です
  が、さっきはケンの店の夏みかんがとてもおいそうにみえたのとちょうどノドもか
  わいていたのでアキちゃんと夏みかん一つ交換させてもらいました。が、ひとつで
  充分満足しました。それに今からこんな大きな夏みかんを十五個も食べたらお腹を
  壊してしまうかも知れないし、手もすごく夏みかん臭くなってしまうのでそんなに
  たくさんいりません。だから私たちの交渉は成立しないでしょうね。
岸田 じゃあお金はどうだね?夏みかん十五個分の現金でソレを買おう。ソレで欲しい
  ときに欲しいものを買えばいい。
パリオ 電子頭脳屋はお金はいただきません。
岸田 なぜだ?お金ならもっとスゴイ考えだって思いつく。お金はいいぞ。
パリオ お金は便利だしイロイロ考えを生みます。がしかし、ソレが問題なのです。お
  金は考えがぎっしり詰まっています。そして、お金からはおそろしいカンガエも湧
  いてきます。だから私はお金を受け取らないのです。
岸田 おそろしいカンガエ?なんだそれは。
パリオ つまり、アナタの抱いたこの男はバカだと言うカンガエ。そして、そのバカぶ
  りを利用して一儲けしようと言う考えです。

     事の一部始終を見ていたアキとユリ子は顔を見合わせて笑いをこらえ
     ている。

岸田 くそー、何時までもそんな綺麗事が通用すると思うなよ。商売ってモノはなー、
  駆け引きの世界。喰うか喰われるかだまし騙されのもっと殺伐とした世界なんだ
  よ。そうさ、お前の言うとおり金の事は怖いんだからな。そんな綺麗事じゃあすま
  されないんだからな。

     と、言い残して去ってゆく岸田。少し落胆したパリオをみてアキ。

アキ ナニカさん・・・・。
ユリ子 だから!なんなのよーアレは!言いたいこと言えばいいってもんじゃ無いんだ
  から。
ケン パリオ・・・・。
パリオ ・・・・・・・・・・・・・。
ケン 岸田さんを許してほしい。この不景気だろあの人もイロイロあって大変なんだと
  思うんだ。
パリオ わかってるよ。
ケン ありがとう。
パリオ えっ?
ケン 理解してくれて。

     突如、目の前を大きな風が吹き抜ける。パリオは目を細め風の中の何
     かをじっと見つめる、なにかを・・・。

声 どうか私をとめてください・・・。
パリオ ・・・・・。
アキ どうしたの?
ケン パリオ?
パリオ ケン、私は行かなければならない。
ケン えっ?
パリオ 彼が呼んでいる。
ケン 呼んでいるって・・・何処へ?
パリオ ケン、サヨナラだ。

     それは突然の出来事だった。ぼくらはすこし面食らった。そんな事は
     お構いなしに去ってゆくパリオ。


   第七場『しょぼい策略』

     パリオが出ていって三ヶ月がたちました。

岸田 (発信音・ピーッ)・・・ウチのお店つぶれてしまったんです・・・・。

     暗闇の中一人、ぽつねんと立ちつくす岸田。こちらも酷く落ち込んで
     いる様子だ。何やら一枚の書類を手に持っている。床にはなぜか電話
     が置かれている。

岸田 もう駄目だー。
ナレーション 株式会社ホビーキシダ、民事再生法適用により倒産。民事再生法とは経
  済的に窮境にある債務者について、その事業又は経済生活の再生を合理的かつ機能
  的に図るため、和議法に代わる新たな再建型倒産処理手続のことである。

     はらりと、申請書が手から落ちて、

岸田 どうしてこんな事になってしまったんだ・・・・・!

     SE=ジリリリリリーン(電話の音)
     受話器を取る岸田。電話の相手に一瞬はっとし息をのむ。が、やがて
     開き直ったような口調で淡々としゃべり出す。(ココで登場する神と
     は「視点」の事。第三者的な状況把握の手段)

岸田 アンタですか、はっははははは・・・。まったく面白い事をなさるんですね。
  はっははははは・・・・面白いですか?悪い冗談かと思いましたよ・・・冗談・・
  ・こんなときに冗談じゃないでしょ?・・・・・。何でウチだけ潰れたりしないと
  駄目なんですか?不公平です。おかしいでしょ。そもそも、あの男が全部悪いんで
  すよ・・・まったく。ソレなのに・・・ソレなのにアンタときたら・・・。神様!
  アンタは不公平です・・・・。一生恨みますよ、アナタとアナタの創った全てをミ
  ンナ!ミンナ!壊してやるからなぁあ!!

     激しく受話器を置く岸田。

クリス 岸田、アノカタヲ非難スルノハ御門違イデスヨ・・・・。
岸田 しかし・・・。
クリス 我々ニハ、我々ノ信ズル正義ガアル。タダ、ソレダケノコトデス。
岸田 ・・・・・。
クリス 忘レテシマッタノデスカ?アナタは闇デス。アナタは闇ノ翼デス。忘レテシ
  マッタノデスカ?サア、観ニ行キマショウ。アリ得ナイ風景ヲ。

     いつもの街の光景。でも、そこにはパリオの姿はない。ケン、アキ、
     ユリ子がいる。

アキ ねえ・・・。
ユリ子 ん・・・・・。
アキ ナニカさん、ホントに何処にいったんだろうね?
ユリ子 うん・・・・・・・・。
ケン ・・・・・。
ユリ子 ・・・。
一同 はあっ!
ユリ子 人生ってさあ、本当にこんなんで大丈夫なの?
アキ 別に・・・。
ケン ・・・・・。
一同 ふう。

     そこに配達の途中のタケシが登場。

タケシ オイ、ケン!見たかよ。
ケン なにが?
タケシ あのオモチャ屋。あのミョウチクリンなオッサンの店。
ユリ子 ホビーキシダ?
タケシ そうそれ。
アキ ソレがどうしたの?
タケシ あっ、アキちゃんっ。
ケン ・・・タケシ!
ユリ子 だから、ソレがどうしたのよー。
タケシ 閉店だってさ。
アキ えっー潰れたの!
ユリ子 へー、そうなの。
タケシ ああ!さっき店の前を通ったら「一身上の都合により閉店させていただきま
  す」だって。そう張り紙がしてあったけど。
ケン ああっ、それな・・・。
タケシ なんだ、お前知ってたのか?
ケン まあ・・・だから言っただろ。あの人もイロイロあって大変だって。
ユリ子 えっ!なに知ってたの?
ケン まあ・・前からその事でちょくちょく話しとかしてたし、同じ商店街のさ、アレ
  だし。なんだかんだ言ってもイロイロ助けてもらったりもしてたし・・・。
アキ この商店街もまた寂しくなるね。
ユリ子 ナニよそれ、あと味悪うー。・・・自業自得じゃない。
アキ ・・・。
タケシ ケン・・・。
ケン さあ、ウチもうかうかしてられないぞ。さあ、頑張らないと。

     そこへ横山光輝のマンガにでてくる悪者ようなマスクをして、頭に銀
     色に塗られたジオングが乗せた男がやって来る。ソレについて怪傑ゾ
     ロみたいなのを巻いた助手らしき男がいる。
     BGM=鞄を持った男

ケン なんだ、アレは?
岸田 やあミンナ、ポクチムが帰ってきた電子頭脳屋さんだよ。
クリス サンダヨ!
岸田 電子頭脳を売りにやった来たよ。
クリス キタヨ!
岸田 惑星から来たよ。
クリス 遙々!キタヨ!
岸田 どうだいキミ達?
アキ ナニ、アレ!ナニカさんのニセモノ?
岸田 コラー!そこ!ニセモノとか言うな!
クリス イウナー!タニシ!
岸田 トコブシ!ヤドカリ!魚介類!
クリス ・・・・・・・クルマエビ。

     クルマエビが遅いから「グー!」って睨まれる助手。

岸田 これ、ニュー電子コンピュータ頭脳。以前のヤツより格段スゴイ。
クリス 最強。
ユリ子 聞いてないって。
岸田 どうだい、新しくなったこのメカの考えはいりませんか?
クリス モウ最強。
ユリ子 こっちは誰よ?
クリス エッ、ボク?・ボク・・・肉骨粉!

     また「グー!」って睨まれる助手。

岸田 お前はいいんだよ!(後で説教するぞって感じの低いテンションでつぶやく)ど
  うだい、キミ?いつもは最新型だから百万円とかするんだけど。
アキ 百万円・・・・?
岸田 今日は特別になんとビックリ零円だよ。
クリス ゼロエンダヨ!ビックリ。
ケン ・・・・・。
アキ ・・・・・。
ユリ子 あやしい、怪しすぎる。
タケシ はい!はい!はい!はい!はい!俺!ください俺!
ケン タケシ!
ユリ子 あやしい、怪しすぎるって。やめなよ、あんたバカ?絶対ワナじゃんこれって
  サー。
岸田 外野手はすっこんどろ!ねー、キミはスゴイ!ガッツあるな。
クリス ナイス!ガッツ!
岸田 もうすごい、石崎くんぐらいあるなあ。もうガッツだけがトリエと言っても過言
  ではないなあ。そんなガッツなキミにぴったりの、とびきりワイルドな計画を用意
  しよう。
タケシ はあ、よろしくおねがいします。
岸田 いくよん。

     下品に腰をカクカクさせて不思議な呪文を唱えるニセモノ。
     ピコピコな電子音。(オリジナルとは違う)

岸田 見える!私にもみえるぞ!(シャアみたいに)
一同 ・・・・・・・。
岸田 たらこの皮をガムみたいにクチャクチャやってみ〜い。噛んで噛んで、噛みたお
  してみ〜い。そうしたら・・・なんか・ガムみたい・・・。
タケシ ・・・・えっ〜!?(本気で困った)
岸田 ねっゼンゼンOK!
クリス ワー、スゲイ。コノ人本物ダヨ。
タケシ たらこ〜ですか?
岸田 ほら、今日は特別に用意してあげたよ。持ってきてあげて。

     助手の男が皿に盛った「たらこ」を持って来る。

クリス ワー、スゲイ。コレ本物ダヨ。
岸田 ハイ!コレ!
二人 タラコ。
クリス ワーオ!本物ダヨ。
岸田 たらこってどうやって数えるかしってる?ヒト腹フタ腹だよ。

     「へえーっ」とタケシが感心している間に助手がおさえつける。

タケシ わあ!なにをする、やめろ。
岸田 さー喰え、モグモグ食え。若いんだから。昔からいうでしょー。たらこだけは、
二人 別腹。
岸田 お好み焼にぴったりのお肉は、
二人 ブタバラ。
岸田 って?
二人 (見合わせ)オイオイ。
岸田 タラコねえ、通風とかにいいとか、よかーないとか。だから、騙されたと思って
  やってみ〜い。
ユリ子 通風にはたしかよくないんじゃなかったっけ?
岸田 細かいこと気にしない。口の中に入ったら一緒。
タケシ うわ!やめろ!
岸田 ビックワンガムよろしく、ガムを噛むと頭脳にいいんだってよー。ガムじゃない
  けどー。
クリス アノ、プラモ狂四郎ノ、ビックワンガムノ「ダグラム」ノヤツヤカラ!柔ラカ
  イ奴ヤカラ!大丈夫ナンダ!ダッタンダー!ッテヤツヤロ。
岸田 ネエきみ、きみ。
クリス ハ?
岸田 すっこんでろ!ダンゴムシ!
クリス グワハッ!・・・・ソリャアモウ車田正美ミタク、グワハッ!!!!
岸田 ナニ座の聖闘士な!?基本的にしょうもないんじゃお前は!一腹喰えばマルカワの
  フーセンガム。
  クリス マルカワ。
岸田 十円のヤツな!四つ入ってる。売ってる、この、箱の、四隅が絶対アタリ!とか
  言ってるヤツとかいなかった?二腹喰えばクイッククエンチ。知ってるか?味がす
  ぐなくなるやつな。昔あったのさー!さードンドンいこう。三腹喰えばバブリシャ
  ス!うーんカッコイイ!カッコイイ!コンナなんか四角くて、コンナなんか銀のヤ
  ツに入ってて。
二人 ワオ!アメリカやね!
岸田 さあドンドン行くぞー。
ユリ子 あやしい、怪しすぎる。ちょっとナニみてんのよー。早く止めて。
アキ ああそうだよ。なんか、ちょっと楽しくなってる場合じゃないんだよ。
ケン 止めろ、ニセモノ!
岸田 さっきからニセモノ、ニセモノって、我々のどこがニセモノな!?具体的に言って
  み?
ケン なんかオッサン臭いし、あたまのヤツはジオングだし。
岸田 ・・・・ハッハハハハハハハ!コレ?(指さして)コレ?・・・・・・こんなの
  ただの飾りですッ! 偉い人には、それが解らんのです。
一同 ・・・・・。
岸田 ダメだ。完全に作戦失敗だ!逃げろ。
クリス オボエテロヨ! 岸田 あばよ!魚介類!ムール貝!

     と言い残して去って行くニセモノコンビ。

アキ ムール貝って?
ケン なんだ彼奴ら?
ユリ子 あやしい、怪しすぎるし、終始グダグダだし。
ケン あっ、お前だいじょぶか?って言うか、こんな所で油売ってていい訳?
タケシ あっ!俺、仕事戻るワ・・・。

     急に我に帰りぴゅーっと何事もなく去ってゆくタケシ。

ケン しっかりしろよな。
ユリ子 なんだったの?
アキ さあ・・・・・。
ケン さあ。

     激しいドラムロールのようなワイルドな曲。
     岸田がジオングとかお面をはずし、クリスと話をしている。

岸田 えーい、忌々しいやつらめ(ポキ!)

     言いながら何かよくわからない棒のようなモノを折る。

クリス アノ鉄板頭ガイナイニモカカワラズ、奴ラ以外ニ手強イデスネエ。

     と言ってもう一本何かよくわからない棒のようなモノを岸田に渡す。

岸田 クソー!駄目だ。何か良い考えは無いのか?(ポキ!)
クリス コウナッタラ、応援ヲ呼ビマショウ。

     さらにモウ一本棒のようなモノを岸田に渡す。

岸田 応援!?(ポキ!)

     葉書をもったタケシが通りかかる。

クリス プエルトリコカラ「チュパカブラ」ヲ呼ヨビマス。

     さらにモウ一本渡す。

岸田 チュパカブラ!?えっ、それマジッスか?(・・・折れない)
クリス (無言で頷く)
岸田 プエルトリコからチュパカブラがやってくる。(・・・折れない)

     SE=ギョオイイイイイイイイン(ジェット旅客機の爆音)
     頭上を飛行機が通りすぎる。
     それを小耳にはさんだタケシが、

タケシ 街ににチュパカブラがやってくる?
岸田 なんだ、あいつは?(・・・折れない)
クリス ナンデショウ?

     再度折ろうと試みるも折れない。

岸田 コレ・・・折れない。
クリス ・・・(それはどうも?)

     イチモクサンな曲。
     音楽中、散々駆けずり回ってタケシが結局元いた場所に戻ってくる。
     そこはケンの店の前である。ケン、アキ、ユリ子の三人がいる。

ユリ子 どうしのよ、そんな血相かえて。
タケシ ハア、ハア、ハア・・・。ど、どうしたもこうしたもあるか・・・・。

     息を切らせながら植木のそばに置いてあるネコ水を喉を鳴らして飲み
     込んで、

タケシ 聞いたんだよ、岸田のおっさんとあのクリスとかいう牧師が話してるのを。
ケン 何を聞いたんだよ。
タケシ やって来るンだよ。ハア、ハア、ハア・・・。
ケン だからなにが?
タケシ チュパカブラ・・・。(ネコ水をもう一口)
ユリ子 えっマジで!
アキ それ、ねこ水・・・。

     SE=カン!(拍子木の音)
     突然ユリ子が猛スピードではけて戻ってくる。なにかイロイロもって
     フリップで説明。(漢方薬とか中国の占いとかで使うようなヤツ)

ユリ子 いい?チュパカブラ。プエルトリコなどで近年突如目撃されるようになった謎
  の吸血生物で身長は1メートルぐらい。二本の足であるいて山羊とか家畜をガンガ
  ン襲ってるらしいのよ。はいコレね。
一同 ヒエー!怖エー!
アキ マジでやばいんじゃない?
タケシ 大丈夫、俺がついてるから。
アキ ?
タケシ アキちゃんを助ける為に戦うなら、そこが俺のいるべき場所なんだ。
アキ ?
ケン ・・・・・。
ユリ子 いいですか?したがってチュパカブラは超コワイ生き物なのです。だからコ
  レ。

     紐のついた籠の中にドカヘルやら槍やら棒やら入っている。

アキ なに、これ?
ユリ子 自分たちの身は自分たちで守るのよ!
ケン また、ふざけて。

     興味津々で装備を始めるアキ。

ユリ子 ふざけてなんか無いわよ。
アキ 集団的自衛権の行使ね。
ケン そうなのか?
タケシ そうなの!

     最後までためらっていたケンが嫌々ヘルメットをかぶり終えるまでは
     そんなに時間はかからなかった。
     桃野谷ウルトラ警備隊の誕生である。

ユリ子 ハイ、準備はいい。みんなひとかたまりになって、離れないよう気をつけて行
  動してください。
タケシ アキちゃん、俺から離れないで。
ケン ・・・・。
アキ 隊長!なにか来ます!
ケン 隊長?
アキ 例の一味です。(ストップウォチを見て)後4秒で接触します。

     緊張が奔る。
     岸田一行登場。
     SE=ドン!

岸田 これはこれは皆様、相も変わらず雁首そろえて・・・なんですかその格好は?
クリス 彼奴ラ、ナンカイッパイ武装シテイルヨ。ヤルキ十分ダヨ。
岸田 なんだー貴様らーその武装は。やられたらやり返すかー?それが、それがお前ら
  の信じる正義なのか?そうか。そっちがその気ならこっちにも考えがあるぞ!
ユリ子 あんた、言いなさいよ。
タケシ チュ、チュパカブラはどこだ!
岸田 なんのことだね私にはさっぱりわからないのだがねえ?
ユリ子 とぼけても無駄よ!あなた達がチュパカブラを秘密裏にこの国に呼び寄せたこ
  とぐらいわかっているのよ!
ケン だからそんな訳ないじゃん。
岸田 なっ!なぜそれを・・・。
ケン えーっ、そうなの!?
岸田 ははん、わかったぞ。そうゆう事か・・・。
ユリ子 そっ、そうゆう事だ!
タケシ そうか、そうゆう事だったのか。
ケン だから!どうゆうことなんだ?
岸田 ご挨拶に出向く手間が省けたとゆうもの。チュパカブラ!チュパカブラ!

     サングラスにマチコ巻き。(あったら)トレンチコートをまとった
     怪しい派手な女がやって来る。

岸田 紹介しよう。プエルトリコからやって来た我々の新しい仲間、ララー・チュパカ
  ブラくんだ。

チュパ (とりあえずアドリブで自己紹介・例=私はチュパカブラ、ララー・チュパカ
  ブラ、プエルトリコで少しだけ有名な女。)
一同 えっ〜・・・?(お腹が痛い時ぐらいに深刻に)
チュパ なによ!
ケン きついなあ。(小声で、お腹が痛い時ぐらいに深刻に)
チュパ ちょっと、なによそれ。
アキ えっ〜ちょっと待って。宇宙怪獣じゃないの?
タケシ そうだよ、ナンカ微妙にちがうね。
チュパ 微妙?ナニ!?せっかく出てきてやったのにこのぞんざいな扱いは?ナニったら
  ナニ?

     辺りを見回して険悪なムードをつくる。

岸田 まあ、落ち着いて。
一同 ・・・・。
クリス 肉骨粉!
チュパ 私、帰る。
岸田 ちょと待って。せっかく来たのにまたプエルトリコまでかえるのか?
チュパ とりあえず堺東まで帰る。そこからはいろいろな交通手段をもちいて即座に帰
  る。
岸田 それ、ほんもんの家やんけ。
一同 ・・・・・・。
岸田 はっはははははははははは!どうだ思い知ったか我々の実力を!今日のところは
  この辺で勘弁しておいてやろう。しかし、今度あったときはコウは行かないよ。さ
  あ行くとしようか。

     と言って去って行く岸田一味。それを呆然と見送る警備隊一同。去っ
     て行った方が何やら騒がしい。なんか岸田さん(かチュパカブラ)が
     ダメダシしている様子。
     SE=ガヒーン!

一同 えっ〜・・・?(お腹が痛い時ぐらいに深刻に)
アキ なんであの人、こんなに私たちを逆恨みするの?
ケン 行き場のない衝動・・・。なんかわからないでもないけど。
アキ チュパカブラ?(舌足らずにつぶやく。今の空気を声のボリュームで表現してい
  る)
ケン うん?
一同 ・・・。
ケン うん。(今の空気を声のボリュームで表現している事がわかりソレで返す)

     一方、怪人軍団は、
     SE=ガヒーン!

岸田 (耳打ち)
クリス ナンデスカ?ゲンバク?
チュパ ゲンシ・・・・バクダン?
クリス ソレナニ?
岸田 (耳打ち)
チュパ オー。
クリス ナンデスカ?
チュパ (耳打ち)
クリス ATOMIC BOMB!?マジですか?

     岸田、原子爆弾を見せる。

クリス (口笛) 二人 うわーこれ!

     顔を見合わせて、

二人 ジュリーの映画のヤツのと同じヤツやんけー!
岸田 太陽を盗んだ男?お前らなんだ、そんな古い映画知っているのか?邦画だし、か
  なり古いし、たいがいなヤツだぞ。
チュパ コレって本物?
岸田 そうだ。こいつは、世界初の原子爆弾トリニティー。「太陽を盗んだ男」よろし
  く私が密かに作成したものだ。これで我々の用件を政府にたたきつける!

     SE=ドッカーン!
     爆発の音と同時に岸田は遠くの空を眺めるように目を細め、朗々と語
     りだした。

岸田 神は王子が務めをはたすよう説得をこころみこう言うのです。『今、我は世界を
  滅ぼす「死」となった』と。
二人 かっこいー。
岸田 ソレでは早速始めるぞ!まずは政府脅迫放送の撮影だ。

     三脚をたて、その前で段取り悪そうにウロウロする。

チュパ コレでイイ?
岸田 いいかなー。

     カセットデッキにセットした怪しげな音楽をかけて、顔を何かで隠す。
     (ニセモノ騒動の覆面でもよし、黒十字軍みたいな頭巾でもよい)
     音楽=テルミン地球の静止する日

岸田 我々は桃ノ谷商店街怪人部隊を名乗る秘密結社だ。我々は原子の火を手に入れ
  た。(原子爆弾を掲げる)これは、本物の原子爆弾だ。ニセモノではない。我々は
  国家に対し次の事を要求する。要求その1。とりあえず速やかに一億円用意しろ。
  要求その2。私の事を「@@@@」って呼ばない。要求その3。@@@@@@@@@。
  その後の指示は追ってする。もしソレを拒否しようモノならば、神の祭壇をみるこ
  とになるだろう。それでは諸君、賢明な判断を期待している。はっははははははは
  はは・・・・・・ははははは(え、まだ回ってるの?)・・・・はははははは。
チュパ えっあー、コレどうやって止めるの?
岸田 あーどれどれ?こう!ヨシ!

     撮影したまま、前に乗り出してカメラをとめる。

一同 OK!
岸田 コレで脅迫ビデオはばっちりだ。
チュパ ばっちりか?
クリス バッチリヨ。

     そこにタケシがまたもや通りかかる。

岸田 キミ、キミ。コレを首相官邸か国会議事堂、内閣総理大臣室まで届けてくれたま
  え。
タケシ はあ?
岸田 首相!総理大臣!そんなことも知らないの?ホントにまったく小泉さんだよ。
タケシ はあ?
岸田 たのんだよー!

     小首を傾げ、岸田から渡されたビデオテープを鞄に詰めて去って行く
     タケシ。

チュパ ああーバカ!渡しちゃー駄目じゃん。
岸田 ああ、しまった! チュパ しっかりしてよ。
岸田 郵便に出さないとなあーと思ってたら郵便配達が来て、ついうっかり。
クリス マタ撮レバイイジャン。
岸田 そうだ。この程度のミスはまだ許容範囲内だ。だがしかし!だがしかし!、大き
  な問題が一つある!
チュパ なに、その大きな問題というのは?
岸田 ソレは!この原子爆弾には核融合を起こす触媒、すなわち濃縮ウランが無いの
  だ。
チュパ ダメじゃん、それじゃあ。コレただの起爆装置じゃん。
岸田 そうやで。
チュパ そうやで、じゃなくて。
クリス ネー、駄目ジャン。
岸田 クソー、せめてウラニュウムさえ手に入ればいいのだが。
チュパ やっぱそうなると原発から盗みますか?
クリス 美浜・大飯・高浜・福井県原発イッパイアルヨ。
岸田 駄目ぇぇ〜!ドロボウはいかんだろ。
チュパ そうゆう問題か? 岸田 元商店主としてはドロボウは駄目ぇぇ〜!
チュパ じゃあどうするのよ?
岸田 どうしたものか。
クリス アアソウイエバ、アイツ何ヤラ怪シゲナ石ミタイノ持ッテタ。コノ石ハスゴイ
  ダノ、ドウノコウノ・・・。
岸田 それだ!そうか、わかったぞー!そいつはオレの憶測100%、濃縮ウランかプ
  ルトニュウムにちがいない。おまええらいスゴイえらい。
チュパ なんでそうなるんだ。
岸田 そしてアノ電子頭脳とやらは、その核燃料で動いていたのだ。おのれー、アノ鉄
  板頭そんなモノまで隠し持っていたのかー。
チュパ ぜったい違うって。
岸田 そうとも言い切れないぞー。なんせ湯沸かし器にインターネットがついているよ
  うな時代だからなあ。ぜったいそうだ。いや、絶対そうにちがいない。
チュパ だからー、ぜったい違うって。
岸田 いいや、そんなことないね。
クリス デモ、アイツ最近ゼンゼン見ナイデスネエ。
岸田 いないならいないでこちらからおびき出してやる。ふっふふふふ。
チュパ でてきますかねえ?
岸田 いや、ヤツは絶対くる。
チュパ ホントですか?
岸田 そうゆう事になってるの。

     SE=ガヒーン!

     暗転。


   第八場『誘拐そして遭遇』

アキ (発信音・ピーッ!)・・・恋人にふられたんです・・・・。

     夜の景色。
     一方、ケンの家。ケンが電話をしている。銀行だろうか、下手になっ
     て必死に頭を下げているようだ。

ケン はい、スミマセン、はい・・・。その件に関しましても、あと一ヶ月待っていた
  だけないでしょうか?ホントに申し訳ございません・・・。

     電話を切り雑誌を読みはじめる。と、アキがふらふらと帰ってくる。
     うつむいてかなり思い詰めている。兄妹の間ではナニも言葉は交わさ
     れない。顔もあわさない。アキはそのまま奥へと入って行く。
     そこへ決闘にでも行くように凄い息巻いてユリ子登場。うつむて雑誌
     を読んでいるケンに、

ユリ子 ねえ、アキ帰ってる?
ケン あっ、ユリちゃん。ああ、さっき帰ってきたけど中にいるんじゃない。
ユリ子 でっ?
ケン えっ?
ユリ子 でっ、アキの様子どうだったって聞いてるの!
ケン えっ?アキのヤツどうかしたの?
ユリ子 あの子、男に捨てられたのよ!
ケン えっ?男?捨てられた?誰に?
ユリ子 あの子が結婚するっていってたあの男でしょ。騙されてたの。
ケン 結婚!なんの話だ?
ユリ子 えっ、信じられない。なんにもわかってないのねえ。

     ただオロオロしているケン。

ユリ子 坂田兄しっかりしてよ。あんた達二人だけの兄妹なんでしょ。
ケン アキが・・・・・。
ユリ子 アナタのせいだからね。ねえ、アキ!ねえ聞いてる?ねえ!アキ!すこし話し
  しようよ。ねえ。

     アキ、裏からコソコソと出てゆく。

ユリ子 アキがいないわ。
ケン アキ・・・・。
ユリ子 あっ!坂田兄、ちょっと待ってよー。

     心配になって店の明かりを消して出て行くケン。ソレを追いかけて行
     くユリ子。
     後を遅れて黒い怪人がもの凄い勢いで通り過ぎてゆく。
     入れ違いでユリ子とケンが違う方向から戻って来てはち合わせる。

ユリ子 アキー。
ケン アキー。
ユリ子 どう、そっちは?
ケン ・・・・・。(首を横に振る)
ユリ子 そう。
ケン いったい何処に行ったんだ、こんなに心配させて・・・。
ユリ子 坂田兄・・・。(首を横に振る)
ケン ・・・・・。
ユリ子 私、もう少しあっちのほう探してくる。
ケン 頼むよ・・・・・。
ユリ子 しっかりしてよ・・・ねっ。(やさしく肩を叩く)

     二人は互いに違う方向へ走り出す。するとまた入れ違いにアキがトボ
     トボやって来る。薄暗い街灯しか灯っていない町中。寒さに、空しさ
     に凍えながらシャッターの前に立っている。
     そこに現れる黒い影(=岸田)。
     その気配に気づきとりつくろうとするアキ。(相手がケンだと思って
     いる)

アキ あっ・・・。
岸田 ・・・・・。
アキ 大丈夫。ゴメン、すぐ帰るから。ホントごめん・・・。
岸田 ・・・・・。
アキ ねえ・・・私はね・・・。
岸田 ・・・・・。
アキ 私は・・必要ないんだって・・・。
岸田 ・・・・・。
アキ おかしいでしょ?もう、必要ないんだって・・・・・・。
岸田 必要の無い人間・・・。
アキ ええそうよ・・・!?
岸田 いいえ。あなたはそうではありません。
アキ えっ?
岸田 そんあ不幸な存在を私はけして認めない。必要の無い人間・・・そんなモノはも
  うこの世に私一人で十分だ・・。
アキ 誰?
岸田 お向かえにあがりましたよ。
アキ 誰なの? 岸田 私は黄昏の翼レイブン。坂田アキさんですね。我々はあなたを必要とする存在で
  す。さあ、参りましょう、我々と共に。
アキ ひゃ!嫌!止めて。

     にじり寄るレイブン。そこに戻ってきたケン。

ケン アキ!
岸田 貴様は!くそ、邪魔が入ったか。
ケン おまえ、アキをいったい何処につれて行くつもりだ。
岸田 貴様なぞには用はない。

     ガヒンとチョップをして気を失ったアキを抱えて去ってゆこうとする。

ケン アキを放せ!
岸田 マッドカクタス!後はまかせたぞ。
ケン まて!

     後を追おうとするが仰々しくフラメンコギターの情熱的なメロディー
     と共に突如現れた仙人掌怪人(=クリス)に行く手を遮られる。

クリス オット!何処ヘ行クツモリダ。貴様ノ相手ハコノ私、仙人掌仮面マッドカクタ
  スダー!

     と言って、仙人掌型の棍棒を振り回す。
     SE=ガヒ〜ン!!ドゥブー!
     えらく吹き飛ばされるケン。トドメを刺さんとにじりよる怪人。

クリス ラクカラーチャ!ラクカラーチャー!

     そこにパリオ登場。

パリオ あっ! クリス チッ!命拾イシタナア。

     といって去ってゆくマッドカクタス。パリオは後を追おうとするがケ
     ンをほっておくわけにはいかない。

ケン ぐおあ!
パリオ 大丈夫か?
ケン パリオ・・・いままで何処に・・・。
パリオ ああ、ケン、もう喋るな。
ケン アキを・・・。
パリオ わかっている、あとはまかせて。

     そこにユリ子とタケシがやってくる。

ユリ子 私たちも連れて行って。
パリオ ユリちゃんにタケシくん。
ユリ子 アキの所に行くんでしょ?
タケシ 俺、約束したんだ。アキちゃんを助ける為に戦うなら、そこが俺のいるべき場
  所なんだ。
ユリ子 !?
タケシ ハハッ・・・映画の受け売りなのかもしれないけど・・・。でも今は言葉の力
  とかそうゆうのを信じたいんだ。・・・今はソレしかないから・・・。
パリオ じゃあ一緒に行こう。

     アキを誘拐した怪人軍団。

チュパ ふっふふふふ。
岸田 ひっひひひひ。
クリス フェフェフェフェフェフェ。

     ロープで縛られているアキが目を覚ます。

岸田 お目覚めのようですねえ、お嬢さん。ひっひひひひ。
アキ なんなの?
岸田 ひっひひひひ。
アキ !!なに?放しなさよ。
岸田 そうはいきません。あなたはアノ男を呼び出す為の大事な人質なのですから。
アキ あーあんた!オモチャ屋のオヤヂ!
岸田 いかにも。今はそのオモチャ屋ももうありませんけどねえ。
アキ こんな事してタダですむと思ってるの?
岸田 あらーいかんなー。いつものしおらしさは何処にいっちゃったのかなあ?(花の
  香りを嗜むが如く臭いをかぐ岸田)
アキ って、ニオイをかぐな!
岸田 お花さんだねー・・・。
アキ あなた達、変な人たちね。
チュパ まあ、人聞きの悪い事をいわないで!十把一絡げにそこの二人なんかと一緒に
  しないでよね。
アキ あんたもヒトカラゲよ!変態、イチジク、ポンカン、逝ってヨシ!・・・って!
  だからニオイをかがないでよ!
岸田 だから!どうしてキミはもっとこうしおらしくできんのだ。
アキ なにを言っているの、私にどうして欲しいっていってるの?バカじゃないの?
岸田 どうしてそんな口をきく?キミはそんな子じゃあなかったはずだぞ!
アキ どうしてそうやって勝手なイメージを人に押しつけるわけ?何でもかんでも勝手
  に押しつけて、なんでも人が思いどおりになると思っているわけ?
岸田 黙れ!おまえも結局あいつらと一緒だと言いたいわけだな・・失望したぞ。
アキ 何でもかんでも勝手に押しつけて、裏切っただの、勝手に・・・いい加減にし
  て!
岸田 えーい黙れー!カクタスあれを持ってこい!
チュパ アノ・・・。
岸田 いいから早くもってこい!

     魚の形をした棒をクリスが持ってくる。

岸田 今からこの魚の形をした棒でオマエをグリグリして、本気で泣かせてやるからな
  ー。
アキ えー、またー?アンタホントバカでしょう?そんなモノを後生大事に取っておく
  なんて。ほんと、いいお嫁さんになれるわよ、いいお嫁さんに・・・お嫁さん・・
  ・。そうよ私なんて・・・。

     お嫁さんという言葉にひっかかって顔をふさいでしまうアキ。

アキ ・・・・・。
チュパ えっ、どうしたの?
アキ ・・・・・・・もうヤダよ・・・ほんと・・・バカみたい・・・ほんと・・・私
  何やってるんだろう・・・みんな大嫌いよ・・・。
岸田 えーい、観念したか小娘め。サアやってしまえ!
チュパ あら、やだ。ちょっとまって。
岸田 ナニをしているんだ。
チュパ やっぱりやめないこうゆうの?
アキ ・・・・・。
チュパ やっぱり良くないよこうゆうの。ごめんね。カクタス、放してやって!
クリス デモー。
チュパ デモじゃないでしょ。ナニぼさっとしてるの。イイから早く縄をといてあげな
  さい。アンタはなんの役にもたたないんだから。モウ大丈夫よ。ごめんなさいね。
岸田 おいおい、なにをやっているんだ。コイツは・・・・。
チュパ だからもうやめにしようよ。
岸田 ナニを言ってイルンダ。
チュパ 女の子が泣いてるのよ、ほっとけないでしょ!
岸田 キミは私の言う事がきけんのか?
チュパ 女の子が本気で泣いているの!そんなこともわからないの?そんなんだからね
  え、アンタはいつまでたっても独り者なのよ、わかる?わかったら終わり終わり。
  悪の組織ごっこはココまで。

     子供のようにわんわんと泣き出してしまうアキ。三人は困ったなあっ
     て表情を浮かべている。そこにパリオ達が到着。ユリ子とタケシは武
     装している。

タケシ アキちゃーん。
ケン アキ!
ユリ子 アンタ、大丈夫なの?心配したんだから・・・。

     難なくアキの所へかけよる。

タケシ あーあ!よくもアキちゃんを泣かしたなー、よくも!
ユリ子 あー!ノリタマ!コイツよ、私にノリタマぶっかけたとんでもないヤツは!あ
  なたがノリタマ怪人だったとは・・・・・。
タケシ クソー、そうゆうことだったかー!(外連味たっぷりに)
ユリ子 どうゆう事だ・・・?(小声で)
チュパ アノーこれにはカクカクシカジカ、いろんなアレとかがありましてー。
タケシ まあとにかく!悪の組織!貴様らの野望もこれまでだーアアア(さらに外連味
  たっぷりに)
ユリ子 悪の組織?
チュパ えっ?ウチらもうそんなんじゃー無いから、ねえ、話を聞いてよねえ。
クリス ・・・・・。(板挟みのクリス、何かを苦そうな顔で反芻している)
岸田 えーい黙れ!黙れ!黙れ!
一同 ! 岸田 おまえら、自分達の立場がわかっていないようだなあ。
一同 ・・・・・・・・・・。

     あたりに緊張が走る。そうであった。事はナニも解決していないので
     あった。そして沈黙を破ったのはパリオであった。

パリオ あなたでしたか。ようやく見つけましたよ。
岸田 なんの事だ!?
パリオ 私を呼んだのはあなたでしょ?さあ!
岸田 来るな!
パリオ 大丈夫・・・。
岸田 おいそれ以上近づくな。

     聖者の如く近づくパリオに岸田のヤクザキック炸裂!
     SE=ゲシッ!

岸田 やめてくれー。
パリオ ぐあはっ!
ケン パリオ!
タケシ よくもー。
パリオ もう大丈夫なんですよ。

     再び立ち上がり近づくパリオ、再びやられてもんどり打つ。

ケン もうイイやめてくれえー。

     さらに再び立ち上がり近づくパリオ。その目はまさにちばてつやのア
     ノ伝説のボクシングマンガの主人公のその目、ソレそのものであった。

岸田 動くな。それ以上近づくな!それ以上近づいたら、こいつがどうなるかわからな
   いぞ。

     原子爆弾を取り出す岸田。
     ME=驚異の音楽

ユリ子 あっ、アレは!?
タケシ なんなんだ?
ユリ子 アレはたしか、ファットマン(長崎型原爆)に使われていたプルトニュウムコ
  ア・・・。
タケシ だから、なんなんだ!
ユリ子 つまりアレは原子爆弾よ!
ケン まさか、そんなあ!
パリオ なんだケン?その原子爆弾っていうのは?
ケン この地上でもっとも憎むべき兵器の一つだよ。
パリオ え?どうゆう事?
ケン キミ流に言ったら人々を恐怖で服従させちゃおうっていうもっともヤバイ考えが
  あの中にはぎっしり詰まっている。
パリオ そいつはいただけないなあ。
タケシ そんなのが爆発したらえらいことになるぞ!
岸田 フッフッフッ、わかったらソレをよこせ!さもなくぼ・・・。
パリオ ・・・・・。(頭のメカに手をかける)
ケン 渡したら駄目だ・・・・ソレを渡したら・・・。
岸田 さあ、その頭のメカをこちらによこすのだ!
チュパ アンタ、もうそんなオモチャ捨てなさいよ。もう充分でしょ。遊びは終わった
  のよ。
岸田 うるさーい!これはオモチャなんかじゃない。私が十年もかけて作り上げたモノ
  なんだぞ。
チュパ 男っていつもそんな事に必死なんだから。いつまでもバカみたいなことを言っ
  てないで現実を見なさい!
岸田 これが私に残された最後の現実だ!さあ、それをこっちによこすんだ!
パリオ ・・・・・・・。(もの凄く困った)
岸田 さもなくば・・・。
ケン 待ってください。そんな事をしたらあなたも死んでしまうんですよ。
岸田 かまわん!どうせこの先、このまま生きていても同じことだ!
ケン 失望してもかまいません!人間なんですから。でも、生き方だけは見失わないで
  ください!
岸田 生き方を奪われる事がどれだけ不安か!おまえナンカにナニがわかる!
ケン 俺だってわかります。・・・俺だって不安なんだ、同じ商店街でやってきたんで
  すから!嫌でもわかりますよ。でも、だからってそんなモノ(不安)の犠牲になっ
  ちゃいけないんだ。みんな時代がいけないんだ、そんなことわかっている。ただ現
  実に振り回されるような、そんな都合よく生きる必要なんてゼンゼンないんだ!
チュパ そうよ。誰だって不安なの、こんな時代ですもの。だから、もう夢から覚めて
 しっかり前を向いて生きていかないと。

     動揺を隠せない岸田。

岸田 キミは・・・キミも私を裏切るのだなあー、そうなんだ、そうに違いない。
チュパ これ以上やったら本当に取り返しのつかないことになってしまいますよ。
岸田 信用していたのに・・・・絶対裏切らないって信じていたのに。
チュパ お願い信じてアナタのためを思って言っているの。
岸田 嘘だ!全部嘘だ!本当はみんなが私の事を嫌っている、恨んでいる・・・。おま
  えもだ!おまえもだ!おまえもだ!おまえもだ!だから壊すんだ、全部!全部!
ケン やめるんだ!
岸田 私は人に裏切られ、時代に裏切られ、そして自分にまで裏切られてこの先どう
   やって生きていけというんだ!
ケン 生きてさえいればこの先いい事だって必ず・・・。
岸田 そんな世迷言をまだゆうか・・・もううんざりだ・・・。
ケン 考えなおしてください・・・。
岸田 うるさい!こうなったら大暴れだ!うわああああああああああああ!!
声 頼む俺をとめてくれ。

     SE=ガヒーン!
     そこにいる全員がその声を聞いた。

チュパ お願いあの人を止めて!
ケン 彼はソレを望んでいる!
タケシ あれを奪うんだ!
岸田 はっははは!取れるもんなら取ってみろおおお!

     突然、人が変わったように走り出す岸田それについてゆくクリス。
     右へ左への大暴れ。
     すこしアホッぽい大暴れの曲。
     原子爆弾を取ったり取られたりの大攻防戦。右に左に行ったり来たり
     の大暴れ。爆弾を持っているクリスに飛びかかるタケシ。

タケシ もらったー!

     SE=ガヒーン!
     阻止する岸田。爆弾をクリスからうけとる。

岸田 カクタスッ!敵と戯れるな!

     そのまま逃げてゆく二人。それを追うタケシ。

タケシ まてー。

     タケシが爆弾をもって反対から出てくる。それを追う岸田とクリス。
     そのまま反対側へ。逆の方から、爆弾をもって逃げる岸田とクリス。
     それを追ってケンとユリ子とアキとチュパカブラ。そのまま反対側へ。
     今度はユリ子が岸田を追撃してくる。

岸田 子供に付き合っていられるか!

     軽く交わして逃げようとする。と、ケンがやってくる。

岸田 来たなプレッシャー!
ケン させるかぁ!

     飛びかかるケン。が、届かない。

岸田 素人め!間合いが遠いわ!

     去って行こうとする岸田の進路をふさぐタケシ。

岸田 ナニ!?

     ふらふらとチュパカブラやって来て。

岸田 !!

     最後は真ん中でポツネンと立っているチュパカブラの手に・・・・。

チュパ えっ?

     それを取ろうとするユリ子。

チュパ ちょっと待って。

     SE=ビューと大きな風

岸田 ソレをこっちへよこすんだ。
アキ お姉さん駄目!
クリス サア、ソレヲコチラニヨコシナサイ!
チュパ 本当に・・・。
岸田 ・・・・・。
チュパ 本当にこれをもう一度アナタに返してもいいのですか?
岸田 ・・・・・。
チュパ 本当にアナタはそれを望んでいるのですか・・・。
岸田 えっ・・・。
クリス ナニヲバカ事ヲ言ッテイルンダ。

     後ろからそーっと近づいてきたユリ子。

ユリ子 アンタは少し黙ってて。
クリス エッ? ユリ子 墜ちろー!(カミーユみたいに)

     SE=ガーン
     ユリ子に棒で殴り倒されるクリス。墜ちるクリス。

ユリ子 どうぞ。

     そして落ちたクリスをアキを縛っていた紐でぐるぐる縛り上げる。

チュパ アナタはそれを望んでいるのですか?
岸田 ・・・・・私は・・・私はいったいどうしたらいいのだ?

     前に歩みよるパリオ。岸田とチュパカブラを示し合わせ、お互いが対
     等に話せるようにする。そして、

パリオ さあ助けに来ましたよ。
岸田 頼むもうこないでくれ・・・・。
パリオ あなたが私をよんだのですよ。
岸田 頼む・・・・・・。

     こんどはグーパンチ炸裂。
     SE=ゲシッ!
     その顔が一瞬悲痛にゆがむがゼンゼン物怖じしないそぶりをみせ、近
     づくパリオ。

パリオ もうゼンゼン大丈夫ですよ。
岸田 私は・・・・・・・。
パリオ うん、だから、もうゼンゼン大丈夫・・・だから。

    もう一度拳を振りかざすが罪悪感とその痛みでもう、力(憎しみ)を
    込めることはできない岸田。

岸田 すまない。そう、私はこうしてキミに止めてもらいたかったんだ。
パリオ そうですね、今止めて差し上げます。
岸田 すまない、本当にすまない。
パリオ ええ。

     何度も何度も心の底から許しを請うように謝る岸田。ソレ抱きしめ、
     もの凄く寛大にみえるパリオ。

パリオ もう大丈夫。これでアナタは救われます。
チュパ ありがとうゴザイマス・・・。

     どこからとも無く、不思議なメカのついた棒を取り出すパリオ。

ケン それは・・・?
パリオ んっ?これ?
アキ それでいったいどうするの?
パリオ これはねえ、そう、こうするの

。      そうにこやかに笑いながら不思議なメカのついた棒でいきなり岸田を
     殴り倒すパリオ。岸田も倒れ込んでしまう。

パリオ トウっ!

     SE=ドッガーン

パリオ やっぱりそこに隠れていたか!

     いきなりカッコイイポーズで指差し見得を切るパリオ。

ケン パリオ!

     頭のメカをさわると無線機のノイズのような音がする。
     SE=ピー・ガー・・・

パリオ 303号発見!これより最後の任務を遂行します。

     SE=ピー・ガー・・・「ラジャー・了解・・・」ピー・ガー・・・・

ユリ子 あんた!いきなりなにしてんのよー!?
パリオ 彼には悪いが少し眠っていてもらおう。
アキ えっーどういう事?
パリオ やっと見つけたぞ。
ケン 見つけたってなにを?
パリオ 私の追って来たアイツが彼の中にいる。
ユリ子 アイツって?
パリオ θЮФ@Θσ。
三人 θЮФ@Θσ!?
ケン そいつって?
アキ 凄い悪いヤツ?
パリオ そう。今、彼の中にもの凄く悪いヤツがいて、そいつが彼に悪さをさせてい
  る。
ケン で、どうするの?
パリオ ヤツをおびき出さないと。
ユリ子 でもどうやって?
パリオ これを使う。
アキ それって。
パリオ そう、描ける石。
タケシ そんなモノでいったいナニが出来るんだ。
パリオ 人の気持ち、こころってヤツはカケルイシのようなものだ。それは書いても意
  味が無いモノだったり、すぐに消えてしまったり、時には誰かに消されたりもして
  しまう事もある。でもね・・・でもそこには「何かを残したい」、「何かを伝えた
  い」って意思がそこにはある。今からこれを使って彼を助けようと思うんだけど。
ケン わかった、じゃあ早速。
パリオ でも人のカンガエを変えるいうことは、人知を越えた天文学的計算よりむずか
  しい。だから誰か力を貸して欲しいんだ。
タケシ 俺やる!その役目、俺が引き受けよう。(やる気まんまん)
パリオ そうだなあ?・・・じゃあケン、キミにお願いしよう。
タケシ エー、俺は?
パリオ タケシ君にはお嬢さん方を守ってあげる大事な役目があるから。
タケシ そっそうか、それなら仕方がないな。ここはケンに任せよう。たのんだよ。

     タケシのその態度に少しイラッと眉をひそめるケン。

チュパ どうかこの人をよろしくお願いします。
ケン はあ・・・。
パリオ ゼンゼン任せておいて。

     電子頭脳から「ヒュル」とへろへろの謎の線を延ばしペタッと岸田の
     額に繋ぐ。

パリオ 今から諸悪を立つ!
ケン で、どうしたらいいの?
パリオ ケンいいかい?私の言うことを想像してみて。
ケン (頷く)
パリオ いくよーん。Θ?ρ◎Φ◎δ!・・θЮФ@Θσ!・・・Θ?ρ!・・Θ?ρ
  !・・・ξ!

     ピコピコな電子音。
     パリオは得体の知れない呪文をとなえた。その声は「天使の歌声」そ
     れと似て非なるモノ、ソレであった。


   第九場『歪んだ世界』

     声と共に周りの何かが変わる。
     いつもと変わらない風景。でもなにか少しへんな違和感を感じる。

ケン ここは?なにかコウ、もの凄い違和感を感じるんだけど。

     そこにユリコとアキが得体の知れない言語で喋りながら登場。その言
     葉はナニを言っているのか分からないくらい早口で、心なしかビデオ
     テープの早送りのようにせわしなく動き回っている。いつもと違って
     とても意地悪そうで得体の知れないアクセサリーを身につけ、得体の
     知れないメカで通話したり、訳の分からない深海魚の様なモノを行儀
     悪く道を歩きながら食べている。

ユリ子 ‡†〆‐・・・・‡〆・・・†〆・・〆〆〆‡‡‡‡「?」。
アキ †〆・・〆‡‡〆‡‡〆‡‡・‡〆・「?」。
ケン あっアキ、ユリちゃん?

     無表情でケンの言葉には耳を傾けない、突っ慳貪な態度。

ユリ子 なにアイツ?
アキ 気持ち悪い。
ユリ子 変態よ、ほんとナニ考えてるのかしら?
アキ ヤダー、さっきからこっち見てるよ。
ユリ子 やだ、サイテー。気持ち悪い。
アキ ふん、ほんと気持ち悪い・・・。

     やがてその話し声は養鶏所のやかましい鶏の様なざわめきに変わって
     行く。待機中の二人は池の鯉よろしく、一定のリズムで口を開け閉め
     して呼吸している。
     SE=養鶏所の鶏の声

ケン これは?二人ともどうしてしまったんだ。
パリオ これは岸田さんが見ている世界。
ケン 岸田さんの夢の世界?
パリオ いや違う。これは彼が知覚する現実。
ケン 岸田さんが見ている現実の世界?
パリオ 彼には世界がこんな風にみえているんだね。

     シャッターの前、カラスの翼をたたんでちょこんとでしゃがんでいる
     岸田を発見。なにやらもの凄く寂しそうだ。

パリオ あ、見つけた。彼だ。
ケン どうすればいい?
パリオ ちょっとまって。

     アキとユリコが岸田を見つけて、またしてもコソコソと話をはじめる。

ユリ子 ほら、アイツよアイツ。
アキ なんだったけ、アイツ。
ユリ子 ホビーキシダよ。
アキ なにそれ、知らない。
ユリ子 ほら、商店街の奧の玩具屋の。
アキ 知らないわ、こんなヤツ。
ユリ子 あんたバカ?ホントに知らないの?アイツねえ最悪なんだから。わざとお釣り
  のお金間違えて小銭をだまし取ったり、幼い女の子にイタズラしたりするんだっ
   て。
アキ ペドファイル!変態サイテー、町中に言いふらしてやりましょー。
ユリ子 それにオガクズ喰って生きてるって話よ。
アキ 虫かよ!サイテー。
ユリ子 虫よ、虫!、虫!
アキ 虫!虫!
ユリ子 なによー、ナニこっち見てるのよー変態。
アキ 栗でも喰らえ!

     とイイながら毬栗を岸田にポコポコと投げつけるアキとユリコ。

ユリ子 死ねー!
アキ 死ねー!
ユリ子 死ねー!
アキ 死ねー!

     ソレに割って入るケン。

ケン アキ!ユリちゃん!駄目だよそんな事したら。
ユリ子 ヤダ!ナニコイツ、私たちに説教たれてるつもり。
アキ なによ、気持ち悪いわね。
ケン アキ!
アキ オマエはこれでも喰らえ!

     と言って、得体も知れない深海魚の様なモノをケンに投げつける。

ユリ子 もう、カンジワルイ。まるで私たちが悪者みたいじゃない。
アキ そうよ!能力のないヤツ、生きる価値のないヤツ、社会に必要とされていないヤ
  ツが悪いんじゃない。
ケン 彼はそうなりたくてそうなったわけじゃない。
ユリ子 はあ!なにいってんの?もうそんな綺麗事だけじゃあ生きていけないの。
アキ もう、そんなヤツが生きてゆく隙間なんてこの世界には何処にも残されていない
  の。
二人 今はそうゆう時代なの!
アキ サイテイ、何様のつもりよ、胸くそ悪い。もう行きましょう。

     と言って去ってゆく二人。

パリオ 大丈夫か・・・ケン。
ケン うん大丈夫、少し面食らったけどね・・・。でも、これが彼が知覚する現実なの
  にどうしてアキが俺のことをあんな風に・・・。これもその「θЮФ@Θσ」の仕
  業? パリオ そうかも知れない、わからないけど。
ケン わからない?わからないって?
パリオ 誰にだって偏見はアルからねえ。真実なんて何処にも存在しない。私たちは世
  界を、全てをココで知覚しているから世界は存在している。
ケン そうなんだ・・・。
パリオ 彼は人を、時代を、世界をそう感じとっているということさ・・・。
ケン ほんとうに嫌な時代だ・・・。
パリオ でもこれは少し酷すぎる。
ケン 早く彼を助けないと。
パリオ そうだった。
ケン 岸田さん。ねえ、岸田さん。

     俯いてモジモジと怯えているカラスの岸田さん。

ケンの声 オイ、オマエ!オイ役立たず!聞こえねえのか?なんとか言ったらどうなん
  だ!

     SE=乱暴に放り投げたマイクがハウリングをおこして転がる様な音

ケン えっ?ナニ?俺そんなこと一言も言って無いのに。
パリオ 駄目だよ、そんなに強く言ったら。彼、怯えていてもの凄く警戒してる。
ケン あっ、ゴメン・・・。・・・?
パリオ 自分に自信がもてなくて、それに自分のやった事に凄く自責をおってるみたい
  だ。ソレでにっちもさっちもいかなくなって、自分の殻の中に閉じこもっている。
ケン パリオ、どうしたらいいんだよ。

     コソコソ話をする二人を上目遣いで不振そうに見上げる岸田。

パリオ ケン、イイかい?前にボクがやってみせた様にやるんだ。これを使ってね。
ケン ああそうか!わかったぞ!
パリオ ソレじゃあいくよ。
ケン OK!

     パン!と手を叩くパリオ。それにいちいちビビル岸田。

パリオ ふー。(かなりわざとらしいため息)
ケン どうしたんだい、キミ?こんな所でため息何かついたりなんかしちゃったりなん
  かしてー?
パリオ うむー。何か景気も悪くて良いこともないし人生って退屈だなあーって。
ケン そうかい!それじゃあ私が今からいい物をお見せしよう!がっひーん!コレ。
パリオ なんだいそれ?
ケン なんだ?
パリオ タダの石だ。
ケン 石にもイロイロある。丸い石もあれば面白い形の石もあるし、その中でもすごく
  いいのがコレ。コレ、描ける石。
パリオ カケルイシ。(岸田さんに)ねえ、イイ?今からケンがこの描ける石を使って
  面白い事をやってみせるっていうから、ちょっと騙されたと思って観てみて?(ケ
  ンに)で?ソレでどうするの?
ケン 今からねえ、これで「カンガエ」を書くよ。

     落ち着いたエカキウタのような歌を歌いながら、地面に描いてゆく。

ケン はい、できた!

     すると突然風が吹くと目の前に「イイカンガエ」が姿を現す。
     クネクネと体を揺すりだす。

ケン な〜んだ?
パリオ わかった!これはイイカンガエだ。
ケン そう「イイカンガエ」は、いつでもそばにいて欲しいと願ってさえいればきっと
  味方してくれるよ・・・。

     イイカンガエが現れると岸田も少し興味を示し身を乗り出してくる。
     すると、どこからとも無く爆音をたて突然風が吹く。と、目の前に
     「ヤバイカンガエ」が現れ「イイカンガエ」に攻撃を仕掛ける。

パリオ さあ、おいでなすった!
ケン コイツは!?
パリオ コイツが通称「θЮФ@Θσ」!つまり、これが「ヤバイカンガエ」。彼はコ
  イツに支配されている。私はコイツを追ってやって来たんだ。
ケン じゃあ早くやっつけないと!
パリオ ソレが駄目なんだ。
ケン どうして?
パリオ カンガエを倒したり、変える事が出きるのはヤハリ「カンガエ」だけなんだ。
ケン じゃあ、どうしたらいいんだよ?
パリオ そうだ、考えるんだ!そしてイイカンガエが勝つように応援するんだ。
ケン 応援!?
パリオ そうだ。負けるなーイイカンガエ!
ケン がんばれー、イイカンガエ!
パリオ がんばれー、がんばれー!
ケン パリオ、なんかイイカンガエ負けそうだよ。
パリオ がんばってくれー、イイカンガエ!
ケン もうダメだー。

     「ヤバイカンガエ」のその絶対的な力の差に「イイカンガエ」が今ま
     さに滅ぼされようとした。その時であった!

岸田 負けちゃダメだ・・・イイカンガエ・・・頑張れ・・・。
二人 ・・・!?
岸田 イイカンガエ!頑張れ!

     SE=ピキ〜ン!
     間一髪の所で攻撃を躱し、ヒーローが逆転するときに流れる外連味溢
     れる曲にのって反撃に転ずるイイカンガエ!

ケン イイカンガエが!?
パリオ ヨシ!やったぞ!
ケン えっ?
パリオ カンガエは良い意味でも悪い意味でも賛同するモノが多い方に傾く事が多い。
  この場合は「ヨシ」と考えよう。
岸田 ヨシ!いいぞ、イイカンガエ!そこだ!負けるな!

     再び爆音と共に今度はプテラノドンが墜落するときの悲鳴のような声
     をあげ、どこへとなく消えてゆく「ヤバイカンガエ」。

パリオ やったぞ!「θЮФ@Θσ」の断末魔だ。
ケン ありがとうイイカンガエ。

     M78星雲から来たあの人のように、一度ゆっくり頷くとイイカンガ
     エも風の音と共に去ってゆく。

ケン 岸田さん。
岸田 私は・・・。
ケン 大丈夫・・・ですか?
岸田 私は・・・。

     ゆっくりカラスの帽子をはずすと、柔らかな光に包まれ麗らかな気分
     になって、

岸田 私は・・・。
パリオ もう大丈夫ですよ。
岸田 えっ?
パリオ ほらね。

     ヨーデルもしくはハワイアンなどの緊張感のまるで無い曲とともに、
     ちょっとソレはソレで問題がアルのでは無いかと思う位、ハツラツと
     した笑顔に満ちたアキとユリコが登場。

アキ こっちよー!こっち、こっちー。
ユリ子 まてー!まて、まてー!
アキ 待ってたまるもんですかー。
ユリ子 先に行くなんてズルーイ。アタシの方が早く行って、大きな綿アメもらうんだ
  から。
アキ それはどうかしら?早くしないと置いていっちゃうぞっ。
ユリ子 まてー!まて、まてー!

          とかなんとかゴチャゴチャ言いながら去ってゆく。

ケン はは・・・。この様子だと、どうやら大丈夫みたいだね。
パリオ それじゃあ我々も戻るとしようか。
岸田 あっ、あの・・・。
パリオ 後でゆっくりと・・・。
岸田 本当に・・・。
パリオ ねっ・・・。さあ帰ろう。

     暗転。

   第十場『大円団?』

     状況はさっきいた状態に戻っている。パリオ、岸田、ケンの三人は眠っ
     ている。心配そうに見守る一行。そして最初に目を覚ましたのはケン
     であった。

アキ ねえ、この二人ホントに大丈夫なの?
ユリ子 私に言われてもわかんないわよー。
アキ だって、もうかれこれ三十分は寝てるよー。
ユリ子 あっ起きた。
アキ あっ!おっ・・・。
ケン あ、アキ。
アキ お、お帰りなさい・・・。
ケン うん。ああっ・・・俺、いつの間に寝ていたんだ・・・・。
ユリ子 ソレより・・・。
チュパ 岸田は?岸田はどうなったのですか?
ケン そうだった。パリオ!パリオ!起きて、岸田さん。

     ぜんぜん起きる気配のないパリオ。そして、その状況にちょっと焦っ
     て雪山で遭難したかの様に名前を連呼し激しくゆすったり、頬を張っ
     たり。

ケン パリオ!
パリオ ・・・ケン・・・・。そっ、そうだ!

     それに続いて岸田が目をさます。

岸田 私は今まで・・・。
パリオ もう終わったんですよ。
岸田 そうだ・・・私は今まで。私はなんて愚かなことをしてしまったのだ・・・。
パリオ だからそれはもう済んでしまったことです。
岸田 私は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのだ・・・。
パリオ だからアレはすべて「θЮФ@Θσ」の仕業で、ヤツがアナタを操っていた事
  であって、アナタはナニも悪くない。・・・・そうだよなケン?
ケン えっ?・・・ああ、そうだよ・・・たぶん・・・。
岸田 ありがとう。でも、もういいんですよ。私だってわかってます。
ケン 岸田さん・・・。
岸田 「θЮФ@Θσ」なんて最初からいないんですよね、こんな私を助けるために、
  わざわざそんな嘘まで・・・。ホント申し訳ない・・・。
タケシ そうだ!アキちゃんを誘拐して、オマケに原子爆弾を使った国家テロまで。な
  んて言語道断!キサマは本物の極悪人だあ!
岸田 そのとおりです。私は悪い事をやりすぎた。私の信じていた正義は間違ってい
  た。
パリオ 間違っていたなら、着替えればいいじゃないですか。
岸田 着替える?
パリオ 正義は信じるモノじゃなくて、正義は装うモノだから。
岸田 装うモノ・・・?
パリオ 汚れてしまったり、自分の体にあわなくなった正義は着替えればいい。
岸田 しかし・・・。
パリオ 一つのカンガエ。自分を、誰かを守りたい、公平でありたいというのも、一つ
  のカンガエを示す事だから。
アキ (小さく笑いながら)そうかもしれないね。
ケン アキ・・・。
ユリ子 アキ、大丈夫?
タケシ アキちゃん、大丈夫かい?
アキ うん。ナンカ、誰だって色々あって大変だけど、それでも前を向いて生きてる。
  そうだよね、負けちゃあーいけないんだよね。だから私も、もう少しだけ頑張って
  みる・・・。それにみんなでバカみたいに騒いだら、悲しいことナンカどっかに飛
  んで行っちゃったー。
ケン そうか・・・。
アキ でもどうして、ココがわかったの?
タケシ 彼が・・・。
アキ ナニカさん、どうしてココがわかったの?
パリオ 額でピッキとね。電子頭脳は伊達じゃないって言っただろ。
アキ やっぱりすごいわ。・・・最初からナニカさんみたいな人を好きになっていたら
  よかったんだ。
パリオ えっ?
アキ 大好き。
タケシ アキちゃん、ソレはないよ。俺だって一応頑張ったんだよ。
ユリ子 アキ。
ケン アキ。
アキ うん、モウ大丈夫だよ。ゼンゼンヘッチャラ!

     鼻をズゴーッ!ってならすと恥ずかしそうに微笑み、

アキ ミンナ大好き!
ケン そうか・・・。
アキ うん!
ケンの声 ソレがアキの空元気だって事ぐらいすぐに分かった。でも今はソレでイイと
  思った。

     やがて照明は徐々にフェイドアウト・・・そして暗転。

     と思いきや。
     SE=ピッ・ピッ・ピッ・ピッ・ピッ・ピッ・ピッ・ピッ・ピッ・ピッ

ケン んっ?
アキ なんの音?
ユリ子 あー!大変だ。
タケシ なんだよ?
ユリ子 この爆弾の時限装置、作動してるううう!あと三分だって!?
一同 ひゃああああああ。(と言いながら飛び退く一同)
チュパ (クスクス笑いからやがてルパン張りの大笑いへ)
アキ なにが可笑しいの?
チュパ 大丈夫よ。
一同 はあ?
チュパ これは単なる起爆装置。空。最初から中身なんて入ってなかったのよ。最初か
  ら爆発なんてしなかったのよ。
ユリ子 えっ、そうなの!
チュパ そうなの。
ユリ子 はあ、そうならそうと早く言ってくれればイイのにー。びっくりして損した・
  ・・ねえ。
アキ ねえ。
タケシ なんだよ、人騒がせなヤツだな!ねえ!びっくりさせるな、この野郎。

     爆弾をポンと小突く。

岸田 うわああああああああ!ヤメロー!
ユリ子 なっ、なに!
岸田 まっ、まっ、待て!そいつにはウランやプルトニュウムこそ入っていないもの
  の、ポロニウムやラジウムなどから生成した口ではとても説明できない、厄介でと
  てもラジカルな放射線物質が詰まっている。その威力は代用品とはいえ、この商店
  街を吹っ飛ばすくらいなら雑作ないことだ!
一同 えーっ!?

     そーっと地面に爆弾を置くと、一同退避。

アキ じゃあ、早く止めてよ。
岸田 そいつは無理だ!
ユリ子 えー、嘘おおおおお!
ケン じゃあどうするんだよ!
タケシ こうなったらグズグズしてらんない。とっとと逃げようぜ!(その場で駆け足
  状態)ほら、アキちゃんも早く・・・。
アキ えー、でもー。
岸田 今から逃げても到底間に合わん!
ユリ子 どうすんのよー。
岸田 もう、お終いだ・・・・ナニもかも・・・。
チュパ 後1分!
ケン ・・・・・・パリオ?なにやってんだよ!?

     アグラをかいて原子爆弾を抱えて何やらゴチャゴチャいじくり回して
     いる。

パリオ んっ、任せて。(胡散臭く舌を出して、慎重な面持ち)
ケン 任せてって?ナニを?
パリオ 要はコイツを止めればいいんだろ。
岸田 バカ!造った私でさえ止められないんだぞ!
ケン バカ、やめろって。
パリオ ゼンゼン大丈夫!こんなのケチャップの蓋をひねるより簡単。

     ケチャップの蓋をひねるが如くキュッって捻る。

パリオ あっ!?

     SE=ピーイイイイイイイイイイイイイイ、どかーん!(大爆発)

     暗転。

     なにもなかったかの様にいつもの街の風景。冬の午後、お昼のひとと
     き。ちょっとだけの日溜まり。
     ケンがお店をやっていて、タケシが仕事をサボっている。アキとユリ
     子がシャッターの前で話をしている。その前にはパリオ。

タケシ ホント死んだと思ったよー。
ユリ子 ビックリしたねえー。
アキ ホント!ドッカーン!ってスゴイ音したもんね。
ユリ子 肝を冷やすとはこの事だね。
ケン でもなんだったの、アノ爆発は?
タケシ 核爆発じゃあないの?
ケン そんなわけないじゃん。
ユリ子 岸田さん曰く、冷却用の金属ナトリウムが先に爆発しちゃったみたい。
ケン 冷却?
ユリ子 あっ、何で冷却する必要があるのかは聞かないでって言ってた。
ケン なんだそれ。
タケシ そんでもって、結局中から出てきたのはただのラジュウム鉱石だろ?
パリオ はっははははははは。
ユリ子 笑い事じゃあない。あなたもよ。
パリオ ・・・・。(後頭部に手を回し申し訳なさそうにぺこりと頭をさげる)
アキ まあいいじゃない、みんな無事だったんだし。
タケシ それにしても、まったく人騒がせなオヤジだよ。正気の沙汰じゃあないよな。
ケン 見失っていたんだ・・・きっと。
タケシ でも、普通爆弾造ったりするかなあ?・・しないでしょ、普通。
パリオ 人が、時代が、世界が、そして自分が信用出来なくなって嫌で、それで、それ
  らすべてを燃やし尽くすための爆弾。誰だって、誰の心にだってそれはあることで
  ・・・。彼はただそれを実際に造ってしまった。
アキ でも、それは爆発しなかった。
ケン あの人だって最初から爆発しないって知っていたのかも・・・。
ユリ子 じゃあ、結局あの人はナニがしたかったのかなあ?
パリオ 話を聞いてほしかったんじゃあないかなあ?
アキ はなし?
ケン 生き方を見失う事がどれほど辛いかって・・・。
ユリ子 それを知って私達はどれだけの事がしてあげられるのだろう・・・。
ケン こうやって考えてあげることしかできない・・・。
アキ その人について考えてあげること。
ユリ子 その人について考えてあげること、それしか今の私たちにはできない。
一同 ・・・・・。
タケシ その人について考えてあげること。
一同 ・・・・・。
アキ そんなこと位よね・・・。
ユリ子 他には何かしてあげられる事・・・・ないのかなあ・・・?
一同 ・・・・・。
パリオ わからない・・・?
アキ うん。 パリオ じゃあ、本人に直接聞いてみればいいんじゃないかな・・・?
アキ そうか。
タケシ そうだよ・・・何でこんな簡単な事がわからなかったんだろう・・・。
ケン 簡単なことかなあ?
ユリ子 簡単なことが簡単じゃあ無いから、考えないといけないんじゃないかな・・。
一同 うんんんんん・・・・・・っ!(首を傾げて考え込んでしまう)

     何かを確信してにこやかに微笑みながらうなずくと、ナニも言わずに
     パリオは去ってゆく。カケルイシを一つ残して・・・。
     優しくてそれでいてどこか寂しげなメロディーが辺りをつつむ。

声 ダイモスより火星本星ならびフォボスにへ告ぐ。我が同朋による303号の消滅ならび
  に惑星改造計画の成功との報告をうけた。これにより人類は合格したことになる。
  近い将来、人類は本星ならびに我が各衛星にも進出する事となるであろう。ひとま
  ず、おめでとう。(雑音「ザッー」)これにて演習を終了する。次は本番だ。諸君
  らの検討を祈る。

   エピローグ『最高のカンガエ』

    街の雑踏の音。(これはこの星の話だから)

ケンの声 そしてパリオはナニも言わずにこの街から去っていった。

アキ いなくなっちゃったね。
ケン ああ。
アキ ナニカさん、もうこの街が嫌になっちゃったのかなあ?
ユリ子 きっと彼は彼の仕事を終えて去って行ったんだと思うよ。
アキ ナニカさんは何処から来たのかしら?
ユリ子 何処だろう・・・?
アキ そしてこれから何処へ行くのだろう?
ユリ子 何処へ行くのだろうねえ・・・?
アキ わからないことだらけ。
ユリ子 わからないことだらけ。
アキ じゃあなんのためにこの星へ来たんだろう。
ケン それならわかる。
アキ わかるの?
ケン そんな気がする。
ユリ子 じゃあどうしてなんだろう?
ケン それは考える為じゃあないかな。
タケシ だから考えを売っているんだね。
ユリ子 どうして売るんだろう?
ケン きっとこの星を変えるためじゃあないかなってそう思うんだ。
アキ テラフォーミング?
タケシ テラフォーミングだね。
ユリ子 あれは!・・・・。
ケン なに?
ユリ子 うん?・・・うんん・・・そうテラフォーミングだね。
タケシ なんだよー。
ユリ子 いーの!
アキ この星、このままじゃあダメなのかなあ?
ユリ子 ダメ?どうゆう事?
アキ ナニカさんはこの星は「ダメだ、住めない」と思ったからテラフォーミングをし
  にやって来たんでしょ?
ケン ダメだってことはないけど・・・。
娘二人 無いけど?
ケン この星のたくさんの人が、病気にかかっているような気がするんだ。
ユリ子 どんな病気なの?
アキ 岸田さんみたいな病気?
ケン (ちょっと笑って)そうだな・・・。頭の中がムズムズズルズルする病気。ミン
  ナいつもそんなのだからカユくて、カユくて仕方がない。
アキ ミンナ頭をかくの?(四人は頭をかきだす)
ケン そのかゆさを止めるために、人々はソレを情報で掻こうとするんだ。情報はカサ
  カサしてるからね。無作為に頭の中にたくさん情報を詰め込んでしまう。
ユリ子 カサカサな情報がいけないって事?
ケン 全部じゃないけど、ヨクナイ情報はヨクナイカンガエ、ヤバイ情報はヤバイカン
  ガエを生むんだ

。      四人はさっきより激しく頭をかいた。

ケン そのカンガエは目先の豊かさだけを求めて、より効率よくお金を稼ぐため必要以
  上に働き続けないといけなくなったり。
ユリ子 たくさんの人が少ない仕事を取り合って生きて行かなくてはならない。
タケシ よくよく考えたら確かにヒドイ話だ。
ケン いや厳密には、ヒドイとゆうことではないんだと思う。 痒くなったらかいて、ま
  た痒くなってというのも一つの生き方なんじゃあないかなあ。
アキ でもそんな事を続けていたら・・・。
ケン うん。
ユリ子 我々人類に残された道は一つ・・・。
アキ なに?
ユリ子 滅亡!
アキ そんなの嫌だよー。
タケシ だったら、ソレこそ今度は火星に住めばいいじゃん。
ケン それが間に合えばだけどね。
タケシ 間に合うよー。
アキ でも正直、地球だ火星だ宇宙だとか、そんな大きな事言われても・・・私にはど
  うすることもできないよー。
ケン 地球も宇宙も知覚するからそこに存在スル。まずはなんでもそこからなんじゃな
  い?俺たちは世界を、全てをココで知覚しているから存在している。・・・アイツ
  はそうゆうことを考えてもらおうと思ってやってきたんだよ。
ユリ子 じゃあ、私たちはそれにどう答えたらいいのかなあ?
タケシ ・・・わかる?
アキ うーん・・・わかる?
ユリ子 ソレは今はちょっと難しいけど・・・。
ケン わからない?
アキ (目を閉じて)でも・・・何となく・・・。
パリオの声 ゼンゼンわかってる。
アキ えっ!今ナニカ言った?
ユリ子 別になにも・・・・?
アキ そっか・・・だよね・・・。
ユリ子 どうしたの?
アキ うんん、なんでもない。
ユリ子 へんなアキ・・・。・・・ねえ?
ケン ん・・・ああ。

     一歩踏み出して。

アキ ナニカさん、この星はどうですか?

     何かを見つけるアキ。

アキ ん?ねえ、これ見て。
ケン あー、ほんとだ。
ユリ子 タダの石だ。
アキ 石にもイロイロある。丸い石もあれば面白い形の石もあるし。
ケン その中でもすごくいいのがコレ。
二人 コレ、描ける石。
アキ だね。

     アキ、描ける石を拾い上げ、

アキ カケルイシ、カケルイシ、素敵な考えがびゅーっと出てくるカケルイシ。
ユリ子 頭に電子頭脳を載せた人造人間がやって来て、いなくなってから私達の周りは
  びゅーっと変わりました。
ケン ウチの近所は少しだけ面白くなった。
アキ ユリちゃんのお母さんも相変わらずですが、前よりずーっと話がしやすくなった
  気がします。
タケシ 若い娘さん達は、なぜか寝る前に三回まくらを叩きます。
アキ あれって何か意味があるのかしら・・・・・?

     何かイロイロにこやかに相談しながら出てくる、岸田一味。

ケン カケルイシ、カケルイシ、素敵な考えがびゅーっと出てくるカケルイシ。
ユリ子 岸田さん達三人は、またお金を借りてお店を再会しました。なんでもハンドメ
  イドの素敵な人形を作って売っているそうです。

     ひそひそ話を始める岸田一味。

アキ でもじつは、ウワサによるとアノ不発弾事件がよっぽど悔しかったらしく、プル
  トニュウムコア二号鋳造に着手とのこと。ソレが彼の新しい生き甲斐だそうです。
タケシ 貧乏暇なし、バカは死んでも治らない。
アキ まあ、事故だけは起こさないよう暖かく見守ってあげましょう。

     退散する岸田一味。

ケン カケルイシ、カケルイシ、素敵な考えがびゅーっと出てくるカケルイシ。
アキ 私たちは相変わらず儲からない果物屋を続けています。
ケン そう、これは小さな果物屋とでっかい宇宙のお話し。
アキ でも望めばいつでも変わる事が出来る、バナナ一本の考えさえあれば。
ケン そう。これが、これこそがアイツが俺たちに残してくれた最高のカンガエだった
  のかも。

     後日。

タケシ 岸田さん、岸田さん。丁度よかった。総理大臣からです。あなた宛てですよ。
  郵便です。よっこいしょ。それでは。
チュパ ナニコレ?
岸田 あっ!一億円入ってる・・・。

                                 END