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メイム「日曜の朝から『ソウイチロー』なんて人の話も
    聞けない白髪の『おやぢ』なんか観て何がたの
    しいものかー。ウンコ!」
カディス「大人の代表『ソウイチロー』をバカにしたな
     。大人の恐ろしさとくと味あわせてやるー。
     再びサカナの形をした棒でグリグリするー。
     はい、フェンシングみたいにー。」
メイム「きゃー、助けてー。やめてー。」
カディス「どうだ、怖いだろーヤバイだろー。」
メイム「やめろよー。」
キルル「ハア!ハア!どうだ悪党、思い知ったか。これ
    が俺達の実力だ!」
ヒデヒロ「やっこさん、いくら何でももう立てないだろ
     ー。」
カディス「ふっふっふふふ・・・・・蚊に刺された程度
     だ。」
一同「なに!」
カディス「蚊に刺された程度だと言ったんだ。」
デヒロ「アタリ!お前のゲームだ。」
アタリ「俺のゲーム。」
ヒデヒロ「そうだ。これがお前の、生きてきた証そのも
     のだ!」
アタリ「俺のゲーム!」
ヒデヒロ「今、攻略しろ!お前のゲームを!」
二人「今、俺(お前)自信の力で!」
男三人「行け!アタリ!」
アタリ「くらいやがれー!」
カディス「しまった!」
ガヒーン!
カディス「ノラン・ブッシュネル・・・・・。」
四人「やったー!」 

まだ、つづく・・・けど・・・。
ここからは文章のみでお楽しみ下さい。(長いよ)

     チュドーン!
     絶命するカディス。
ジャグァ「大悪党カディスの断末魔だ。」
ヒデヒロ「しかし、最後にアイツは一体何を・・・・?」
キルル「なにか不吉な予感がする。」
     息を荒げ、苦しそうにするメイム。
アタリ「どうしたんだ、メイム?」
メイム「良かったね、アタリ・・・。」
     力無く言い残すと、ぐったり倒れ込んでしまうメイム。
アタリ「メイム!?」
     倒れそうになるメイムを支えようとするアタリ。
     その時、傷口がグチャリと音を立てる。
アタリ「これは!」
ジャグァ「いかん、凄い熱だ。」
キルル「それにソノ傷・・・。」
ジャグァ「とにかく本部に運ぶんだ!」
     場所は移りコモドールの本部。
     横になって動かないメイム。それを見守るアタリ、ヒデヒロ、
     キルル。
     ピー・ピー・ピー・ピー・ピー・ピー・ピー・ピー・ピー・ピー・ピー。
     そこに白衣を着た司令が入ってくる。
キルル「司令!」
ヒデヒロ「何かわかったのか?」
ジャグァ「彼女の体から検出されたのは環状ペプチド・アマトキシン。つまり、毒キノ
  コに含まれる遅効性の猛毒。」
キルル「毒キノコ?」
ヒデヒロ「メイムになぜそんな?」
ジャグァ「彼女はおそらく猛毒の毒キノコを食べさせられたのだろう。」
キルル「じゃあ、どうなってしまうんだ?」
ジャグァ「環状ペプチド・アマトキシン系の毒キノコは、ファロトキシンに比べ10倍ほ
  ど毒性は強い。」
ヒデヒロ「それじゃあ、彼女は・・・。」
ジャグァ「おそらくもう・・・。」
ヒデヒロ「そんな事って。」
キルル「一体だれに?」
アタリ「俺だ・・・。」
キルル「えっ!?」
ヒデヒロ「アタリ、お前?」
アタリ「俺がいけないんだ・・・。俺があの時、メイムにキノコを食べさせていなかっ
  たら・・・・・。」
ヒデヒロ「どう言うことだ?」
アタリ「俺があの男にだまされて・・・・それで・・・。」
     目を覚まして話を聞いていたメイム。
メイム「あーあ、みっともないなあー。」
アタリ「メイム!?」
メイム「死ぬときぐらい、もっと綺麗に死にたかったなあ。なんせキノコだもん、カッ
  コ悪いよ・・・。」
アタリ「大丈夫だから。死ぬなんてそんな事・・・。」
メイム「あーあ。最後の最後までなんて私は不幸なんだろう?・・・ホント不幸だわ。」
アタリ「えっ? メイム 貴方に、貴方達に出会っていなければなんの未練もなくただこの世を恨んで死
  んでいけたのに・・・。せっかく初めて笑う事が出来たのに。・・・ほんと罠ばっ
  かり・・・。損してばっかりだよ。」
アタリ「そんな悲しい事言うなよ。君は卑怯だ、卑怯だぞ・・・。」
メイム「でも、今度生まれ変わるとしたら、わたし・・・鳥か猫がいいなあ・・・。で
  も、メイムは不幸だから虫とかになっちゃうんだろうなあ。」
アタリ「人生は一度キリしかないんだ。だから、最後まであきらめちゃあ・・・。最後
  の最後まで頑張らなくちゃ意味がないだろー。
メイム「一度キリなんかじゃない。魂は不滅なの。そして、私と貴方はリーンカーネー
  ションの輪の中でふたたび巡り逢う時が来る。そう信じてる。いつかきっと、再び
  めぐり逢うまで何度でも・・・。
アタリ「メイム、あきらめちゃダメだ!」
メイム「でも、何度?哀しみを背負って死んで行けば、あなたに逢えるのかなあ?」
アタリ「メイム・・・。」
メイム「最後に私に・・・私に・・・言葉をちょうだい・・・。」
アタリ「・・・・言葉・・・・・・・言葉・・・・・。」
メイム「・・・・時間切れ・・・。」
アタリ「好きだ!」
メイム「バカ・・・。・・・アタリ、私、死にたくないようー・・・。」
     メイム、絶命する。
     ピィィィィィィィィィィィィィィィィィー。
アタリ「メイム・・・メイム!」
     一人落ち込むアタリ。
アタリ「メイム、ゴメン。ついに最後まで世の中不幸ばかりじゃあ無い事、証明する事
  できなかったよ・・・・。ホントにゴメンよ・・・・・。」
     後ろから再び司令がやって来る。
アタリ「なぜだ?なぜ、こんな事になってしまったんだ・・・。」
ジャグァ「人間は何度もあやまちを繰り返す。そして、傷つき強くなっていく。」
アタリ「嫌だ。俺はこんな結果を認めない。」
ジャグァ「目を背けるな!これがお前の行為!そして、それに対する結果だ!」
アタリ「こんなデタラメでいい加減で・・・こんな不幸な結果を認めろって言うのか!」
ジャグァ「それでも、どんな人生でも人生はやり直しがきかない。あやまちを乗り越え
  て生きて行くしかないんだ!俺はお前にそうして強くなってほしかったんだ。」
アタリ「嫌だ。俺はこんな結果を絶対認めない。」
ジャグァ「何もせず、ただ流された結果がこれだ。認めるんだ。」
アタリ「俺は!それを認める事の出来る時がいつ来るんだ!あんたは知ってるんだろ・・
  ・・だってあんたは・・・。」
ジャグァ「俺はたくさんの後悔を、哀しみを乗り越えて今ここにいる。そして、今は自
  分の人生に悔いを残さないようにこうしてお前の前に立っている。」
アタリ「おせっかいなんだよー。何も出来ないくせに。」
ジャグァ「今はそれでもかまわない。」
アタリ「どうせ死ぬ前に誰かの役に立ちたいとでも思ったんだろ。」
ジャグァ「それが昔の自分のためにでも。」
アタリ「自分の人生に・・・。」
ジャグァ「悔いが残らないように。」
アタリ「俺が考えそうな事だよ。」
ジャグァ「いつまで経っても変わらない。」
アタリ「ホント、おせっかいだぞ。前田当!」
ジャグァ「そうだ。私はお前自身だ。こうして傷ついたお前を見守りに五十年後の未来
  からやって来たお前自身の化身だ。」
アタリ「なにも出来ないくせに・・・。」
ジャグァ「すまない。こんな結末になってしまったのは私のせいでもある。お前のため
  によかれと思いやった結果がこのざまだ。」
アタリ「未来の秘密道具とかもってないのかよ?『ドラえもん』みたいによう。気の利
  かないやつだなあ。」
ジャグァ「ホントにすまない。」
アタリ「冗談だよ。・・・こんな時に冗談か・・・。・・・ほんと冗談じゃない・・・。」
ジャグァ「これは、これだけは使いたくなかったんだが・・・。君の本当の意思がきき
  たい。」
アタリ「これは・・・。」
     慎重な面もちでアタリにノラン・ブッシュネルを託す司令。
ジャグァ「そうだ。これはお前の人生だ。」
アタリ「俺の人生。」
ジャグァ「そうだ。お前の人生のプログラムだ。バグのせいでとんでもない事になって
  しまったがな。」
アタリ「俺の人生。」
ジャグァ「そうだ。そして、このボタンを押せばもう一度人生をやり直す事ができる。
  もう一度、あの時の河原に戻る事ができるんだ。」
アタリ「これを、これを押せばもう一度、メイムに逢えるのか?」
ジャグァ「それはわからない。私は勿論、メイムにも、そしてキルルにも逢えるかどう
  かもわからない。ただ、全てが白紙に戻るだけだ・・・。」
アタリ「全てが白紙に・・・。」
ジャグァ「待っているのは絶望かもしれない。」
アタリ「あんたやキルルとも二度と逢えないかもしれないんだよなあ・・・。」
ジャグァ「そうだ。再び逢えるという保証は私には出来ない。」
アタリ「俺はキルルやあんたにいろんな事を教わった。それはどうなるんだ?」
ジャグァ「その経験も全て白紙になる。そして、また同じあやまちをくり返すかも知れ
  ない。」
アタリ「メイムとの美しい想い出も・・・なにもかもが・・・・・。」
ジャグァ「消えてなくなってしまう。」
アタリ「・・・・・・・ダメだ!そんなの・・・ダメだ!そんな事はしちゃいけないん
  だ。あやまちをくり返してもなんの意味もない。デタラメだけど、嘘かもしれない
  けど、この気持ちが本物ならそれでいい。俺は俺の人生を生きる。」
ジャグァ「ありがとう。よく言ってくれた。これでは、あの男と私は一緒だな・・・。
  すまない。本当にきみをダメにするところだった。私は、ただ君のその言葉をまっ
  ていたんだ。わかったらそれを返してくれ。」
アタリ「言葉?」
ジャグァ「そうだ。その言葉をまっていたんだ。・・・・どうした?」
アタリ「言葉?・・・言葉だ・・・。」
ジャグァ「どうした?早くそれを返すんだ。」
アタリ「いやだ。伝えるんだ。ちゃんと言葉を届けたいんだ・・・。だから・・・俺は
  それでもメイムに逢いたい・・・。」
ジャグァ「止めるんだ!哀しみに流されるな!お前は、またそんな不毛な事をくり返す
  のか?」
アタリ「不毛でもかまわない。誰がなんと言おうと俺は俺だ!俺はもう周りに流された
  りしない。誰がなんと言おうとかまわない!そうだ。これが、これが俺の意思だ!」
     アタリ、ボタンを押す。
     ブチッ!
     再びよく晴れた初夏の夕暮れ時。もう日も傾き山の向こうに
     かくれて二人の影も白くかすんでいた。
アタリ「あっ!なんか飛んでる。」
ヒデヒロ「蜻蛉だろ。」
アタリ「カゲロウか、なんだー。」
ヒデヒロ「おまえ、絶対わかってないだろう?」
アタリ「わかってるよ。カゲロウつったらあれだろ?砂漠とか海とかに浮かぶ幻のこと
  じゃない。」
ヒデヒロ「それは蜃気楼。」
アタリ「あーまちがえた。じゃなくて・・・なんだったけ?」
ヒデヒロ「この季節こんな河原でよく見ることの出来る水棲昆虫。英語で「メイ・フラ
  イ」。つまり、五月の虫といったとこだな。」
アタリ「なんだ、その説明的なセリフ。」
ヒデヒロ「自分で聞いおいて、それはないだろう?お前は本当にデタラメだな。」
アタリ「今頃気付いたか。」
ヒデヒロ「それに、お前は何でもわかってやるからタチが悪いよ。」
アタリ「あっ!そう、お前に借りてたゲーム。これ返すよ。」
ヒデヒロ「えっ?もうクリアしたのか?」
アタリ「うんん。なんか途中でやめちゃった。」
ヒデヒロ「そうか・・・。」
アタリ「あーあー、何か面白い事とかないかなー。なーあ、これからどうする?メシは
  家に帰って喰うんだろー。」
ヒデヒロ「ああ、俺はもうちょっとだけ河にいって遊んでくるけど、オマエどうする?」
アタリ「本気で言ってるのかー。もう言ってるうちに日も落ちるぞ。」
ヒデヒロ「行かないのか?」
アタリ「帰ってゲームする。」
ヒデヒロ「またゲーム。」
アタリ「しょうがないだろ。火曜日なんだし観るもんなんかないだろ?サザエさんの再
  放送でも観ろ・・・・やっぱ止めた。」
ヒデヒロ「えっ?」
アタリ「行こうぜ河。」
ヒデヒロ「・・・・・。」
アタリ「行かないのかよ?まだ、もう少し遊んでいられるぜ。」
ヒデヒロ「どうしたんだ、今日は・・・?」
アタリ「カゲロウの話をしてただろ?だから、急に河が見たくなったんだ。ただそれだ
  け。」
ヒデヒロ「なあアタリ・・・・・。」
アタリ「ここは河のある街。だから、もう少しだけ遊んでいよう。あの蜻蛉たちが空を
  闇に覆い尽くすまで。」
ヒデヒロ「えっ?」
アタリ「言葉だよ。」
ヒデヒロ「言葉?」
アタリ「そうだなあ。たとえば、別れ行く大切な誰かに送る、そんな最後の言葉・・・
  とか。」
ヒデヒロ「・・・・・。」
アタリ「いまいちか?・・・・そうかいまいちか・・・・・。」
ヒデヒロ「なあ・・・話があるんだ・・・。」
アタリ「!!」
     ひょいとなにかを捕まえるアタリ。
アタリ「おい、コイツがカゲロウか?」
ヒデヒロ「・・・・・。」
アタリ「どうした?」
ヒデヒロ「・・・・・・・ああ、そいつがカゲロウだ。」
     ゆっくり暮れて行く空。
     そして、闇の中、ただ川の音だけが残っていた。

                         END

 

御覧頂きありがとうございました。

お気を付けてお帰り下さい。