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相崎  粉雪、よく聞くんだ。
    ここの建物の前の持ち主はかつて「自己とは何
    か」を問いつづけ、それを求める求道者であっ
    た。男は来る日も来る日もそれだけを求めた。
    いつしかそんな彼に共感してか、彼の周りには
    人があつまるようになった。しかし、男は気づ
    いていた。自己の果てにあるものは絶対的な
    「虚無」だという事に。そして、同じ永遠を求
    めた13人の少女達。或日、建物の持ち主と     13人の少女達は、ここで互いに互いのノドを
     噛み切って自らの命を断った。
    しかし、建物の主だけは死ぬことが出来なかっ
    た。互いに殺しあう相手がいなかったからだ。
    事もあろうことか1の少女が恐ろしくなって、
    その場を逃げ出したのでアル。だから男は死ぬ
    ことが出来なかったのだ。一人で死のうと思っ
    たのだが、それも叶うことはできなかった。
    みすぼらしく生き残り、自己の狂気を見つめ続
    ける男、それが・・・。

真智子  相崎慎也。またの名を「独立現無無明灯」
     「無明の家」代表、深崎慎路。それがあな
     たよ。

相崎   蟹船真智子くんだね。君がここに戻ってくる
     のは分かっていたよ。私がこの機械を君に
     送った時から・・・イヤ、君が親友の岬くん
     を置いてここを逃げ出した時からね。

真智子  六ちゃん?わたし、真智子よ。貴方、この
     二人に何をしたの!

相崎   彼等は深いトランス状態にある。

真智子  この二人は関係ないじゃない。

相崎   粉雪くんには君のかわりに。そして、彼には
     私達の遥かなる旅立ちの水先案内人として先
     に旅立ってもらうよ。これも運命なのだよ。

真智子  運命。私はそんなものは信じない。そして、
     そんな事はさせない。

つづく・・・